私の背後をブルドーザーが通る

 先日、休みの日に、用事を済ませるために車を出したの。ウチは下町だから、駐車場から大通りに出るまでは、車一台が通るのがやっとというような細道なのね。で、その日、駐車場から車を出したら、運悪く対向車が角を曲がってくるのが見えたのだ。「あちゃー!」と思ってワタシ、咄嗟にたまたますぐ先に少し奥まった作りの家があったので、その家の前に車を寄せて、アチラがかわして通り過ぎてくれるのを待ったの。そうしたら、その車、角を曲がらずにそこで停まったままで。おかしいな?と思ったら運転席からオッサンが出て来て、トランクを開けて荷物を運び出し始めたのだ。「オイオイ!」と思ったのだけど、「あ、自分の家に荷物を運び入れようとしていたんだ、すぐ終わるのよね?」と考え直して、少し待つことにした。こっちは急ぐ用事ではなかったから。
 でもね、対向車を待たせるにしてはこちらに何の合図もないし(ふつうはこちらに向かって会釈して、手を挙げて「ちょっと待って」くらいのサインを送るでしょ?)、そのオヤジの動きがやけにゆっくりなの。まるでこちらの存在など全く見えていないがごとく。
 なので俺、仕方ないから車を発進させて近づいて、オヤジに文句言おうと思ったのね。「ちょっと車を動かしてもらえませんか?」って。それでいざ、通りの角まで車を動かしたら「あ、通れる(苦笑)」・・・。
 そう、敵もさるもの、自分はお前が通れるようにスペースを開けているから、何も問題はないだろ?ということだったわけね。
「だったらさ、車から出てきたとき、手招きでもして「通れるよ」とこちらに合図を送ってくれてもいいでしょうよ!」(俺なら絶対にそうするし。)と言いたかったのだけど、オヤジはすでに荷物を運ぶために家の中に・・・。
 狭い日本に肩寄せあって生きているのだから、お互いにちょっとした心配り、思いやりは欠かせないものだと思うのだけどね。どうなってるのよこの国は!と思わされることが最近、多すぎてね。ちょっと「痛勤電車」カテゴリーではない前置きバナシが長くなり過ぎたのだけど、同じようなちょっとした思いやりに欠ける行為が通勤電車の中はあまりにも多すぎて・・。ワタシ、以前と比べれば随分と他人の「非常識行為」に寛大になってきたつもりではあるのだけど、やはりちょっとした“イラッ!”は日常茶飯事で。
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 いまの通勤電車の中でイヤなのは、吊革につかまって立っている時に、後ろを通る人が体や荷物をワタシの背中にぶつけてくること。人間は、肩幅とお腹の幅を比べれば、ほとんどの人は肩幅の方が広いのだから(中には「樽」のように、前向いても横向いても同じ幅の人もいるけどね(笑))、狭いところを通る時、カニのように横歩きして歩かないといけないわけよね。仮にその気持ちがあってそれが出来ていたとしても、ダメなヤツの場合、肩に鞄をかけたまま人の後ろを通るので、鞄の角が容赦なくワタシの背中をぶっ叩くわけね。痛いんだってば!
 中には、邪魔にならないようにバックパックをお腹の方にかけている殊勝な人もいるのよね。それは、それでいい。だけどね、そのままの恰好で通路を通れば、いくら横歩きしても余計に幅を取っちゃうわけで。結局は人の背中を次々となぎ倒していくことになる。それじゃ、せっかくのちっぽけな「思いやり」も台無しよ!わかってる?
 混んだ電車の中で人の後ろを通る時は、「鞄を肩から下ろして」「鞄を横向きにして人に当たらないように歩く」のよ!いい?
 でも、以上はまだ許せる範囲。まるでブルドーザーのように、正面を向いて人の背中をかき分けてくる人の、なんと多いことか。そういうヤツら、大概はスマホの画面に目を落としたままだから、画面に夢中になって自分の肩が人にぶつかろうが、何にも感じていないのだと思うのだ。ヤツらは公共の場を歩きながらも独りスマホ世界にどっぷり浸かっていて、回りが目に入っていないわけだから、手のほどこしようがないわよね。
 いざシートに座れたとしてもそれはそれで、そんなスマホ世界にどっぷり入り込んだ人が隣だと、無意識に肘を横に張って画面操作していることが多いので、横に座ると窮屈この上なくて。身体を動かしてこちらの不快感を示すと、邪魔するんじゃない、とばかりに睨まれたりするから、そうしたことも面倒くさくてね。
 ただただ我慢して、眠ろうかとあきらめて目を瞑ると、今度は反対側に座った女が鞄の中をガサゴソやっていて、ヒジが当たる、当たる。ヒジ鉄・連続攻撃。「おいおい、鞄の中を探るときは上半身を前に少し倒すだけで、横の人にヒジをぶつけずに済むでしょうに!その前にまず、鞄の中をもっと整理しときなさいよ!!」と心の中で叫びながらも、ああ、バカバカしい。と考え直して、フテ寝するワタシ。
 嫌な現実を早く忘れないと・・。そんな毎日でございます、やれやれ。