セイコ・アルバム探訪2019~『SEIKO JAZZ2』

 

   2月20日に発売された聖子・ジャズ・プロジェクト作品、第2弾をレビュー。

  このアルバム制作のニュースと、同タイトルを冠したツアー情報は、昨年の夏コンで早々と発表されていたものの、肝心なアルバム収録曲やプロデューサー情報などは全く出ないままに2019年を迎えて、リリース直前に収録曲とジャケットが公開されたと思ったら、ジャケットの方はいかにも聖子たん子飼いの“彼”が撮った風情のイマイチな出来で(クレジットを見たら、ビンゴ!でした・・・トホホ)、不安が拭いきれないままこの作品を聴き始めたhiroc-fontanaだったのね。

(オフィシャルサイトにしても、特設の「SEIKO JAZZ」コーナーは相変わらず2017年発表の第一弾の情報のまま更新されていなかったりで、そんなプロモーションのチグハグさが「何だかナ~」と思わされるのよね。)

 でも、そんな不安は、杞憂に終わった。

 この第2弾も、第1弾『SEIKO JAZZ』に劣らぬ、いや確実にスケールアップした快心の出来映え。

 第1弾のレビューの締めでワタシ、こんなことを書いたのね。

「SEIKO JAZZ」が、単なる「SEIKOなりのJAZZ」ではなく、「SEIKOならではのJAZZ」となる日を期待して・・・

  第1弾は、どちらかと言えば、セイコたんがスタンダード・ポップスを“ジャズ風のアレンジ”で歌った、「SEIKOなりのJAZZ」に挑んだ作品だった、と。

 そしてこの第2弾が「SEIKOならではのJAZZ」の境地に到達したのかというと、まだそこまでの評価は保留しておくべきと思われるものの、かなり「コマを進めた」のは確かなように思う。曲目は「スタンダード・ポップス」から「スタンダード・ジャズ」のカテゴリーに確実に移行していて、ジャズと銘打ちながら気づけばカーペンターズやらバーブラ・ストレイザンドやらディオンヌ・ワーウィックのカバーに走っていた(苦笑)前作から、今回はフランク・シナトラナット・キング・コールジュリー・ロンドンらが好んで取り上げた、渋めの「ジャズ・ナンバー」中心に選曲されている。

 アレンジでいえば、1曲目「Sway」~2曲目「もしあなただったら/It Had To Be You」の流れが、"ラテン"から"4ビート"の畳みかけになっていて、これはそのままジャズならではのリズムのノリなので、だからこそ聴いた瞬間に、「あ、今回はセイコ、ジャズしてるじゃん♡」と思えたのかも。このオープニングからの"引き"が、このアルバムのカナメと言えるのかもね。

 1曲目の「Sway」での聖子ボーカルがまた、なかなか良いのだ。メリハリの効いたラテンのリズムに乗って早口な英語をリズミカルに繰り出しながらも、中低音のボイスをさりげなく、ソフトに響かせている。「本当はもっとイケるのだけど、ここはコントロールしてこの程度に抑えているの。」と言わんばかりの「余裕シャクシャク」なボーカル。その「余裕」が、『SEIKO JAZZ2』では終始良い方向に作用しているように思えるのだ。

 ジャズならではのスキャットやアドリブは、今回も聖子さんのボーカルにはほとんど見られず、メロディーを忠実にたどるボーカル・スタイルは変わらない。その辺りはまだまだ今後に期待、の部分ね。しかし、ジャズスタイルのアルバム2作を制作する過程で身に着けたジャズ・フィーリングは、確かに聖子さんの中に定着しつつある、そんな印象を『SEIKO JAZZ2』からは感じることができるのよね。だから、今作ではリズムや音程の確かさだけでなく、肝心なアピール・ポイントである「声の響かせ方」にまで神経を行き渡らせて歌えていて、それがきっと「余裕シャクシャク」に聴こえる部分なのだと。そして、「余裕」はつまり「リラックス」→「心地良い」ということで、ボーカル・アルバムとしては確かに聴いていて「心地良い」のだ。

 アレンジ&プロデュースはアメリカのアカペラ・グループ「Take6」の元主要メンバーのマーヴィン・ウォーレン氏。ストリングスを絡め、ヴォーカルの中低音を活かしたゴージャスかつシックなイメージのアレンジは前作でのデビッド・マシューズさんのそれを踏襲しながら、マンハッタンから今回は西海岸系のミュージシャンを中心に起用して、「It Had To Be You」ではビッグバンド風アレンジに掛け合いコーラスが入ったり、「How Insensitive」ではミュート・トランペットのムーディなオブリガード・ソロを入れてみたり、そして「The Way You Look Tonight」では自らデュエット・ボーカルとして参加、聖子とトリッキーかつ美しいハーモニーを聴かせてくれたりで、聖子ボーカルの魅力を十分に活かしつつなかなか変化に富んだ面白いアルバムに仕上げてくれていると思う。

 今回もそんなわけで、何となくリピートしてしまう「セイコ・ジャズ」。え?それってもう、「SEIKOならではのJAZZ」になってるじゃん!って?

 いいえ。「Over The Rainbow」の演歌風のしつこいビブラートだけはまだ、「SEIKOならではのJAZZ」だとは認めたくないわ(苦笑)。ということで、まだまだ次回作にも期待を込めつつ。

(追記)3月2日(土)、友人がチケットを取ってくれた神奈川県民ホールの「SEIKO JAZZ2コンサート」に幸運にも参戦してまいりました。演奏は10曲強と少なかったものの、アルバムを忠実に再現するこのコンサート独特のリラックスした雰囲気のなか、全曲堂々のナマ歌唱、バックミュージシャンとの息もピッタリで、何より聖子さんが楽しそうに歌ってくれているのが伝わってきて、こちらも至福のときを過ごせました。「セイコ・ジャズ3,4と、このジャズ活動はぜひ続けていきたい」との発言もあって、友人とは「本人ももう、今後はこっちのスタイルの方が(夏コンみたいな体力使う活動よりも)ラクだと思い始めているのかもね」なんて話をしながら帰ってまいりました(笑)。