マイラバ。小林武史とその周辺。その2

Swallowtail Butterfly?あいのうた/Mamas Airight
 そもそも前回、My Little lover小林武史を取り上げたのは、前回の日記のテーマ「My Sweet Home」からの連想なのであった。
 「My Sweet Home」というと、小泉今日子のヒット曲(94年)の題名。その作・編曲者が小林武史、というつながりだ。俺、88年頃のアルバムあたりからキョンキョンを真面目に聴き始めたんだけど、このころから彼女、詞の自作に取り組んだり、若いミュージシャンと組んだりして、とてもいい動きをし始めていたのね。そんな活動の中で、彼女の90年代イメージを決定付けたのが小林武史作・編曲のミリオンセラー「あなたに会えてよかった」だった。確かレコード大賞作詞賞を受賞したと記憶しているが、キョンキョン自作の詞は切なくて、でも前向きで、シンプルながらとても良く出来ていたけれど、そのシンプルな詞を生かしたのは、小林武史のメロディーによるところが大きいと思う。「サヨナラさえ上手に言えなかった」「追いかけてた夢が叶うようにと」「遠い空に輝く星のように」というサビの3パターンの詞がどれもぴったりメロディーにハマッていたから、聞く人の心にとても素直に響いてくる。小泉今日子はこの頃、CM女王としてもしばらく君臨していたけど、感性豊かな「素美人」とでも言うべき彼女のイメージづくりにこの曲(つまりは小林武史のセンス)は欠かせなかったように思う。
 そして「My Sweet Home」では、郷愁にも近い家庭への憧れを、A&Mサウンドを思わせるクリアで温か味のあるアレンジと、ちょっと哀愁味のあるメロディーに乗せて歌っている。この曲も個人的にとても好きだ。(のちのMy Little loverの作品「My Painting」という曲のアレンジがこれにクリソツで、小林氏のお気に入りなのかも。)
 ところで、実は、俺がキョンキョンでイチ押しなのは88年の『Best of kyon-king』に収録の「月の夜のシ・ア・ワ・セ」という曲。ここでは小林さんは作曲のみだが、メロディーメイカーとしての彼の才能が遺憾なく発揮されている、おいしいメロディー満載の曲。キョンキョンファンにもこの曲、好きな人が多いみたいで。
 90年代に入って、個人的に耳に合うというか、これは良いな、と思った音楽に、小林武史が絡んでるものが少なくなかった。サザンは昔から聴いていたけど、キョンキョンしかり、「スワロウテイル・バタフライ」しかり、ミスチルしかり、そしてMy Little loverと。何故なのか考えてみたが、こればっかりは個人の趣味の問題だからよくわからない。しかし自分なりに分析するに、まず作曲家としては、コード進行やメロディーモチーフが多彩で、1曲にとても充実感があること、だろうか。歌謡曲や筒美メロディーに慣れた耳にも決して「もの足りなさ」を感じさせないというか、サビのインパクトだけで勝負、ではなく、1曲を通じてとてもメロディーが大切に作りこまれているな、と感じることが多い。これはミスチルの桜井さんの曲にも言えること。(あくまで想像だが、プロデューサーとしての小林氏がそのあたりでも一役買っている可能性もなくはない。)一方、アレンジャーとしては、ストリングスとかブラスとか、生の楽器を効果的に使っていて、とても耳に優しいところ。ギターもドラムも、尖った音が少ないというか。ちょっと語弊があるかもしれないが、70年代の洋楽の音を引き継いでいるような感じだから、40代の俺の耳にもうるさくないのかもしれない。まあ、あくまでも感覚の問題だが。
 さて、マイラバはまたしばしの沈黙に入っているが、先のシングルのような「癒し路線」は悪くない方向だと思う。マイペース、スロウ、(そしてエコロジーへ?)この辺のキイワードが小林武史の音楽性には、合っているのかもしれない。