祝・デイリーチャート10位!~Hiromi★Deluxe

 

  11月1日発売の45周年のハーフベストアルバムがなんと、オリコンデイリーチャートのトップテンにチャートイン(なぜか10/31付チャートでした)。またもやキセキを創ってしまった太田さん。ウィークリーチャートでも45位と、久々のトップ50チャートイン。

 キセキをお祝いして、改めてレビュー記事を書いてみようかと。

 まずは、前半の新録曲群。1曲目「ステキのキセキ」(詞:太田裕美、作編曲:前山田健一)は、5/1にアナログ盤での発売ながらウィークリーチャート最高位74位を記した先行シングル。ワタシももちろん先んじて聴いてきたナンバーながら、改めて太田さんの歌詞の素晴らしさに唸った作品。過去のシングル曲のタイトルを盛り込んだアニバーサリーソングとしては、キャンディーズの「微笑みがえし」に始まって、聖子たんは「20th Party」「30th Party」と2曲もやらかしてるし(笑)、伊代ちゃんも30周年で「オールウェイズ・ラヴ・ユー」なんて曲、作っちゃってたりして、正直ちょっと手垢まみれな印象よね。

 でも太田さんの場合、同じ趣向の曲であっても、たとえばこんな感じで。

  風をあつめ 深呼吸

  しあわせ未満 足るを知るの

  意識次第 どんな時も

  生まれ変わるチャンス

  夢を求め まっすぐに

  生きて行く (作詞:太田裕美

  詞が深いでしょ?そして今の太田さんだからこそ、こうしたメッセージがグッときてしまったりするわけでね。

 ヒャダインこと前山田氏からもらった原曲のタイトルは「Spring」だったそうで、そんなイメージの明るいメロディーに、太田さんのまっすぐな、弾むような歌声がピッタリな一方、いざ過去の曲のタイトルが絡む箇所は、なぜかメランコリックな印象が漂ってくるのが不思議で、そこが何とも味わい深い曲。

 続く2曲目は、正真正銘の初出し曲「たゆたうもの」。詞曲編とも前山田氏による作品で、録音は「ステキのキセキ」と同時期(昨年11月)に行われていたもの。音楽界における太田さんの歴史的存在価値を世に知らしめた番組「名盤ドキュメント」(NHK)でも太田さんファンを公言していた前山田氏らしく、"いかにも太田裕美"的な、ファルセットとハミング(ご本人のバックコーラス)を活かした独特の浮遊感に満ちた曲に仕上がっている。サビでの転調も、秀逸。

 ここでの「たゆたうもの」とは、「水のように形を変えるもの」のことであって、歌謡曲・フォーク・クラシック・テクノ・・・多様な音楽ジャンルを渡り歩き形を変えながらも「太田裕美」という本質は決して変わらない、彼女自身そのもの、ということなのでしょう。まさに、太田裕美のための、太田裕美にしか歌えない、そんな歌。

 そして3曲目が「ステキのキセキ」とのカップリングで先行発売された「桜月夜」。10/19にTOKYO MXテレビで放送された「ミュージック・モア」でも披露してくれて、ピアノ弾き語りの熱唱に、hiroc-fontana、涙ボロボロでした・・・。こちらは先行記事がありますので、そちらをご覧くださいませ。ワタシこの曲本当に大好きでね、実は最近のワタシのカラオケ定番曲でもあるの・・・(汗)。皆様ゴメンナサイ。

 4曲目は朝ドラ「ひよっこ」(2017年)の劇中歌だった「恋のうた」(詞:安田佑子、作編曲:宮川彬良)。シャンソン風のメロディーに、舌足らずで甘い太田さんのスキャットがベストマッチ。思わず、赤いとんがり屋根に黒猫がうずくまる「メルヘン世界」にトリップしちゃいます。

 そしてアルバム中盤は、高嶋さち子ピアノクインテットをバックに、セルフカバーを2曲。「木綿のハンカチーフ」はオリジナルに近いストリングスアレンジ。太田さんとしてはとにかく「歌い倒(たお)している」曲だけに、ボーカルに単調な印象があるのは否めないものの、その歌声の裏側に年輪を重ねた"達観"のようなものが感じられるのも確かで、もはや遠距離恋愛に引き裂かれる男女の目からは抜け出て、「鳥瞰」でこの歌世界を捉えている気もする。まさに、今の彼女にしか歌えない「木綿」、かも。

 続く「さらばシベリア鉄道」は、時の積み重ねの中で育った彼女の代表曲として、しなやかさを増した凛としたボーカルで、この曲特有の哲学的な世界観を"年齢相応の深み"を加えて再現している感じ。イイです。

 後半は、ニューリミックス(「Reiwa Mix」)での "21世紀太田裕美ヒットメドレー"。どの曲も独特の哀愁味を帯びたシンプルなメロディーに、さりげなくも"じんわり"と来る言葉選びに感動させられる曲ばかりで、改めて太田さんがソングライターとしても稀有の才能をお持ちであることに驚かされる。

 25周年記念CD-BOXのボーナス・トラックだった「First Quarter-上弦の月」も、「みんなのうた」で素晴らしいアニメーションとともに人気を博した「僕は君の涙」も、ともにリミックス版では軽やかでフォーキーなギターサウンドに生まれ変わっていて、新鮮な印象。「パパとあなたの影ぼうし」「初恋」を挟み、「金平糖」「」のリミックスバージョンは、太田さんのボーカルがよりクリアになって感動新たに。

 何より素晴らしいのは、40代、50代、そして60代の太田さんが年齢を重ねてこそ歌える歌を、その時どきに歌ってきてくれたこと。"21世紀太田裕美ヒットメドレー"を聴いて、それがよくわかったのだ。だからこそ、今の自分の心にこれほど迫ってくるのだ、と。そして、聴くたびに勇気づけられるのだと。

 あらためて「太田さん、45周年おめでとうございます。」

 そして、いい歌をたくさん、ありがとう。これからも、応援していきます。