類似タイトル考〜柳の下にドジョウは何匹?

きよしのソーラン節きよしのズンドコ節
 かなり前のエントリーで、中山美穂が歌手活動の後期に出したシングル「マーチカラー」がシブイ!ということで取り上げたことがあったのだけど、残念ながらこの曲、ほとんど売れなかったのよね。一方、彼女には「マーチカラー」に先立つ5年ほど前に「ROSE COLOR(ロゼカラー)」という大ヒット曲があって、以前からタイトルが似ていて何だかややこしいな、という印象があってね。俺としては「ロゼカラー」よりも「マーチカラー」の方が断然お気に入りだったのだけど、後に出た方にはどうしても二番煎じの印象がつきまとってしまうから、それが売れなかった原因のひとつなのかも、なんて思ったりして。
 そこで今回は、同一アーティストがリリースした柳の下のドジョウ狙い、二番煎じ・三番煎じのタイトルの、ちょっぴり哀しいウタ達を取り上げてみようなんて思ったのだ。ただし、そこには単なる偶然と思われるものもあれば、アーティストやスタッフのイロイロな思惑が色濃く浮き出たものもあってね。二番煎じどころか文字通りの名曲もあれば、ゲロゲロな迷曲も数知れず。思い浮かぶだけで結構なサンプルが出たのだけれど、結構オモシロイいと思うので以下、紹介してみたいと思うのだ。どうぞお付き合いくださいませ。

1.まずは、文字通り大ヒットのあとの「柳の下のドジョウを狙った(以下「柳ドジョ」)」ケース。「ま、とりあえず勢いで行っちゃおう」みたいな安直路線(笑)。このパターンは演歌の方々に多いみたいで。
ぴんからトリオ 「女のみち」の大ヒットを受けて「女のねがい」。「女のゆめ」。「女のきず」。なんと第4弾シングルまでが柳ドジョでした。「女のねがい」まではたしか、そこそこヒットしたみたいで、俺も覚えてます。それにしても第4弾までとは、安直よね。でもそれが許される演歌の世界って、スゴイ。
氷川きよし 「箱根八里の半次郎が彼のデビュー曲。ご存知「ヤダネったら、ヤダネ」。柳ドジョの第2弾は大井追っかけ音次郎」。このウタにも確かキメのフレーズがあったよね、覚えてないけど。(きよしに関してはタイトル画像にもご注目ください。)
クリスタルキング  いわゆる「一発屋さん」は、柳ドジョパターンで玉砕した人たちが多いのよね。クリキンのミリオンヒット「大都会」に続く柳ドジョは「蜃気楼」でした。結構イイ曲でそこそこヒットしたんだけど、これを最後にクリキンはまさに蜃気楼のように消えていきましたとさ。
欧陽菲菲  デビュー曲にして大ヒットのベンチャーズ歌謡「雨の御堂筋」。その第2弾となった柳ドジョは「雨のエアポート」。でもこれは筒美京平の名曲で、これがヒットしたことでフィーフィーは見事にスターの仲間入りを果たしました。こちらは成功パターンね。

2.次の分類は、デビューからのトータルイメージで売るために、あえてタイトルをシリーズ化するというアイドル特有の販売戦略のケース
桜田淳子 1st「天使も夢見る」→2nd「天使の初恋」。
堀ちえみ 1st「潮風の少女」→2nd「真夏の少女」。
 
 このあたりは、びっくりするほど曲の出来も「やっつけ仕事」だったりして、たとえヒットしなくてもいい、というスタッフの開き直りがあるのよね。ある意味清々しくもあり、一方でキャラ勝負で売る覚悟も見え隠れしているわけで、そこだけはすごいと思う。
岩崎宏美 1st「二重唱(デュエット)」→2nd「ロマンス」。以降「センチメンタル」「ファンタジー」と続く。いわゆる「カタカナ・シリーズ」。でも俺はこれは最初から狙った路線ではなくて「ロマンス」が予想以上に大ヒットして初めて固まったコンセプトなのじゃないかな、と見ている。そういえば、セイコたんの「○○の○○」というタイトルも、いつの間にかシリーズ化されたパターンよね。
・斎藤由貴 この人もそうね。「卒業」→「初恋」→「情熱」といきました。こちらは「(セーラー服)三部作」として成功。そういえば、この三部作のルーツは森昌子「せんせい」→「同級生」→「中学三年生」かもね。
ダウンタウンブギウギバンド 「スモーキン・ブギ」→「カッコマン・ブギ」。こちらは説明不要かしらね。同じパターンでは横浜銀蝿の「○○ロックンロール」シリーズなんてのもあったっけ。ルーツを辿ればブルースの女王・青江三奈(「伊勢崎町ブルース」→「長崎ブルース」→「大田ブルース」)に行き着くのかもね。

3.これらのパターンに当てはまらないのが最後のケース。こちらははっきりとした意図が感じられない分、ちょっと「トホホ」な感じが漂っちゃったりもするのだけど、良く聴くと意外に埋もれた名曲がたくさん隠れていたりするのが、この分類かもしれない。ざっと挙げてみましょう
フィンガー5「学園天国」と「バンプ天国」。
野口五郎「青いリンゴ」「悲しみの日曜日」「青い日曜日」。
河合奈保子「愛してます」「愛をください」。
柏原芳恵「春なのに」「春ごころ」。「最愛」「しのび愛」。
小柳ルミ子「雨...」「スペインの雨」。
キャンディーズ「ハートのエースが出てこない」「ハート泥棒」。
森高千里「私の夏」「夏の日」。
工藤静香Blue Rose」「Blue Velvet」「Blue Zone」。
平井堅「POP STAR」「fake star」。
浜崎あゆみ「Vogue」「Voyage」。
安室奈美恵Don’t Wanna Cry 」「Baby Don’t Cry」。

 ね?いっぱいあるでしょう?この中では平井ケンちゃん「Pop star」&「Fake star」なんかははっきりとアンサー・ソングという側面があったりもするのだけど、モリタカやおハマさんなんかは、トーシローの自作詞である分、もうちょっとちゃんとしたタイトルを考えろよ!的な印象が拭えなかったり。野口ゴローちゃんに至っては、3曲もからめた類似タイトルのつけ方に、いかにも70年代初頭の芸能界のおおらかな(イイカゲンな)仕事っぷりが垣間見えて微笑ましくさえあります。方や静香姐さんのブルー・シリーズや芳恵さんの春ウタ、アムロちゃんの2つの「ドン・クライ」なんかは捨てがたい名曲揃いで、それはそれで類似タイトルの必然性を感じたりもして、非常に面白かったりします。

 さて、冒頭に挙げたミポリンの2曲「ロゼカラー」「マーチカラー」なんだけど、実は同じ「カラー」でも両者の意味はまったく違う、というハナシ。「ロゼカラー」のカラーはColorで、「色」。「マーチカラー」のカラーはCallaで、「花の名前」だったのよね。つまりは最初から「似て非なるもの」だったわけ。みなさんは最初から、知ってました?