頑張ってる、ひらはらさん〜『my Classics 2』平原綾香

my Classics2

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 ひらはらさんを“クラシックかぶれの高慢ちきオンナ”と思っているそこのアナタ。是非このアルバムを聴いてみてください。(そ、そういう俺こそ、かつてはひらはらさんを大いに誤解していた一人だったのよね・・・(汗))
 過去ログ→『Path of Independence
 この作品は、アーティストとして当然のように要求されるコマーシャリズムとは一定の距離を置きながら、真摯に音楽(うた)に向き合ってきたボーカリストが、その足跡の中で生み落とした、旬の果実。この新鮮で今しか味わえない天然の甘さ・すっぱさ・ほろ苦さetc.を、存分に楽しみたい。そんな気にさせられるのよね。
 ひらはらさん本人が敬愛する偉大な作曲家たちが生み出したクラシック作品を、そのイメージを外すことなく大切に言葉を選んで自ら詞をつけて歌う。本作はそのコンセプトで作られてヒットした『My Classics!』の続編ではあるのだけど、続編にありがちなマンネリ感や“やっつけ”的な感じが全くないばかりか、より本シリーズ(と言っちゃいましょう)のコンセプトを深化させたような仕上がり。今となっては前作の方がむしろ、代表曲「Jupiter」や「ノクターン/カンパニュラの恋」を収録していた分、やっつけ的に見えてしまう。
 とにかく本作での注目は、ひらはらさんのボーカルの成長。
 これまでどちらかと言うと、低音でのハスキーでソウルフルな歌声が印象的だった彼女だけど、今回はクラシックオペラ(ソプラノ)の発声で、思わず肌が粟立つような素晴らしいファルセットを聴かせてくれるのね(「ハバネラ」「Love never dies」)。特にエンディングに収録されたミュージカル・ナンバー「Love never dies」での平原さんは、え?S・ブライトマン?みたいなカンジでビックリさせられます(笑)。
 また、「JOYFUL,JOYFUL」(ベートーヴェン「合唱」)ではゴスペル風のシャウトやリトル・マイケル(ジャクソン5ね)ばりのラップで楽しませてくれるし、「アランフェス協奏曲〜Spain」(ロドリーゴ「アランフェス協奏曲第2楽章」)ではジャズ・ギターのメロディーを見事なヴォイス・パーカッションで再現したりと、それぞれの曲・アレンジに合わせた七変化ボーカルで、決してリスナーを飽きさせない。うん、丁寧に歌って言葉を大切に伝えることが主体だった2年前の『Path of〜』の頃と比べても、その変化は如実なのです。
 ひらはらさん、奢ることなく真面目に歌に取り組んできたのだなあ、ということを感じさせてくれる、本当にフレッシュな印象の1枚。
 10年後の「Jupiter」をその時の彼女がどんな風に歌うのか、ちょっと楽しみ。(貫禄ばかり出て肝心な声は出なくなって、仕方なく思いっきりメロディー崩して引っ張って、フェイクして・・・なんてこと、ないわよねきっと・・・ひらはらさんなら。笑)