35年目の女王様に謁見


 ラッキーにも今年も謁見が許されました。ユーミン女王様です。『Yuming SURF & SNOW in Naeba Vol.35』2月11日(祝日)・水曜日の回。
 ユーミンのライフワークとも言える"Surf&Snow"も今回で35回目とのこと。(ちなみにhiroc-fontanaは今回で5回目の参加。)昨年末の記事でも書いたのだけど、マンネリとかなんとか言われながらも、長い間同じことを続けていくということはもうそれだけで、"かけがえのない価値"を生むのだ、ということを強く感じさせられた今回のユーミンのライブ。昨年の40周年も良かったけれど、今年は特に雪深い苗場という場所で35年もライブを続けている女王様の気力とそれを裏付ける圧倒的な力量に、まさに圧倒された感じ。本当に素晴らしいライブでしたわ。

 フロントステージのセットはどこか異国の遺跡風。ごつごつとした岩肌がステージ全体を覆っている形で、それがライティング効果で様々な顔を見せてくれるようになっていて、いつもながらお金がかかってるわ〜、とため息。オープニングでセンターから登場したユーミン(曲は「インカの花嫁」)、まるで古代エジプトの王妃のようで、金色の煌びやかな衣装は、まさしく女王様。(小林幸子in紅白、なんてことは言いますまい。(笑))一昨年来のハードな全国ツアーのスケジュールを見事に走り切った成果もあってか、All about POP CLASSICO [Blu-ray]そのお姿も一段とシェイプアップされて、登場時にバックライトに浮かび上がったシルエットのお美しいこと。(シルエット、というところがミソ?苦笑)
 いいえ、実際に今回のステージパフォーマンスはそのキリリとしたスタイルから紡ぎだされるダンスはもちろん、心配された(?)歌声も中低音を中心にとても安定していて、ここ数年では完成度が一番高かったと言えるかも。前半はセットのテーマに沿ってミステリアスな曲を集め、ネイティブアメリカン風の衣装(リンリン・ランランとは言いますまい。(笑))に着替えての中盤からヘップバーンよろしく白いジバンシー・スタイルで登場した後半(こちらの衣装は本当にステキでした!)は35周年にちなんだ予想外の(嬉しい方の)選曲の嵐で、セットリストも最高でした。詳しくは、毎年お世話になっているこのサイトをご覧くださいませ。アンコール曲「恋のスーパーパラシューター」(1973)ひこうき雲をはじめ、その音楽性の40年経ても変わらぬ"新鮮さ"には改めて感動。そしてユーミンのステージ上での計算された動き、そのエンターテイナーとしての実力の確かさにも改めて瞠目。
 今回のステージを観ながら思ったのはね、やっぱりユーミンはある意味この国の戦後"高度成長期以降"の象徴なのかもな、なんてこと。この"Surf&Snow"がスタートしたのは1980年で、まだ日本もようやく先進国として安定してきたばかりの頃。SURF&SNOWその後にバブルとともに空前のスキーブームがあって、それでユーミンの巫女的な先見性が証明されたわけだけれども、その後のバブル崩壊とともにスキーブームも消え去って、日本は長い経済低迷期に入るわけよね。
 ユーミンの方も"Surf-Side"の逗子マリーナライブは20世紀の終焉とともに休止したりもしたわけだけど、一方で雪深い苗場スキー場でのリゾート・ライブの方はその後も意地のように続けてきた結果、結局はいまだにこの不景気の中(アベノミクスだとか円安・株高とか言っても結局は不景気でしょ!)、決して安くはないチケットを必死にゲットして、各地からはるばる雪国のライブに駆けつけるファンが溢れるほど存在するわけで、それこそが高度成長期を終えて40年以上浮き沈みを繰り返しながらも先進国として生きながらえてきたこの国の今の姿(成熟した姿)なのかもしれないな、なんて、大袈裟にも考えてしまったのだ。そして、時代が移り変わろうとも頑なに守り続けてきたこのライブの先にユーミンが見ていたものは、まさしくこの今のこの時代の日本の姿(流行りモノではなく、こだわり抜いたホンモノがキチンと評価される時代)なのではないか、なんてことも。。。この日この時のためだけにウィンターリゾートホテルの特設会場"ブリザーディウム"に集う、いまだバブルの影をひきずったような、スノッブな中年男女たちの姿を横目で見ながら、私の感じたこと。(果たして私はどうなのかしら? 苦笑)松任谷由実40周年記念ベストアルバム 日本の恋と、ユーミンと。 (初回限定盤)(DVD付)
 かつてユーミンが発したという言葉。
「もしもあたしが売れなくなるとしたら、日本の社会が何か変わる時だと思う。」
うん。本当にそうかも。そう思った。そして、今回のライブを見て、この国もユーミンもまだ大丈夫、そうも思えて少しだけ安心したりして。。。(甘いかしら?)
 とにかく今回のユーミントークもパフォーマンスもキレキレ、本当にノリノリでお元気でした。舞台をはける時には「また苗場でお会いしましょう」とあっさり継続を宣言。はい、彼女が続けていってくれる限り、私も意地でも(笑)このプレミアなライブ空間を体験し続けたい、そう思いましたわ。