額の刻印

 また、やってしまいました。
 その日、久しぶりに会った友達と盛り上がって、つい調子に乗って日本酒をグイグイ。少し前に風邪で寝込んで、しばらくお酒が飲めなかったこともあって、もう、ホントに美味しくて。
 でも私、過去に何度となく日本酒で失敗していることをその時は都合良く記憶から消し去っていたんですね。
 友達と別れたころ、おそらくすでに酩酊状態だったワタシ。帰りの駅の階段で蹴つまずいて、おでこを強打。と言ってもそこは酔っぱらいです。さほどのダメージを感じずに改札に向かっていたのです。それで、駅のホームに向かう途中、若い女性に突然、呼び止められたんです。
 「大丈夫ですか〜?!」と。
 え?と振り返る私に、女性はバッグから取り出したティッシュを数枚渡してくれ、「これで、とりあえず…」と、顔を拭く仕草。
 言われるままに顔を拭いてビックリ‼️
 流血してる!それもかなり多量に…
 女性は心配そうに、さらにバッグから絆創膏セットを渡してくれて、「本当に、大丈夫ですか〜?」と。
 私、これはヤバイ、と思いつつも、これ以上見ず知らずの人に迷惑をかけてはいけないという気持ちと、それ以上に恥ずかしさから、
 「だ、大丈夫、と、とにかくだいじょ〜ふ、れす、から…。」
 呂律も回らないままに言い訳しながら、彼女から逃げるように踵を返して、とりあえず駅の外に出て、タクシーを止めたのです。
 あとはショックで、急に回り出したアルコールのせいで家の住所を運転手さんに告げるのもやっとこさ。クルマが走り出したのもわからないくらいに、あっと言う間に前後不覚状態に陥ってしまい、着きましたよ!と叩き起こされてやっと、ああ・・・帰れたんだわ、と。そんな状態で。
 
 翌朝。あの状態でいつの間に自分で貼ったのか、眉間に十字に貼られて血の滲んだ絆創膏を恐る恐る剥がすと、眉間のすぐ下に、パックリと3センチほどの傷が・・・。そして鼻の真ん中が無残に腫れて、まるで私はロッキーか?アバターか?みたいな。 アバター 3Dブルーレイ&DVDセット(2枚組) [Blu-ray]ロッキー(特別編) [DVD]
 この傷、しばらく消えそうにありませんが、これからの忘年会シーズンに向けての自分への戒めとして、むしろ残っていて欲しいくらいです(苦笑)。
 それにしても、です。見ず知らずの酔っぱらいオヤジにきちんと声をかけてくれて、ティッシュと絆創膏をくれたあの若い女性。その優しさに、今更ながら感謝です。この世の中、捨てたもんじゃないですわ。生きてて良かった。いろんな意味で、そう思いました。
 あの時の彼女に。しっかりとお礼も言わずに申し訳ありません。本当に、ありがとう!