滑り込みセーフ?

 俺が3年前に辞めた会社が、ライバル会社に吸収合併されるそうだ。昨日、懇意にしていた先輩(♂、50代、独身)から「希望退職を志願した」との電話が入る。よく聞く話だが、吸収合併の話は水面下(首脳陣の独断)で進行し、一般社員は寝耳に水だったそうだ。
 3年前に俺がその会社を辞めた理由は、会社の行く末が見えていたから、などということは全く無く、あくまでも個人的な理由からである。確かにその会社の人事施策や事なかれ主義の体質には疑問を感じていたし、頭打ち状態の業績に「きな臭さ」も感じてはいたが、俺も順調に行っていたなら今も勤めていたに違いなく、きっと「井の中の蛙」よろしく発表当日に慌てふためいていたことだろう。
 今の自分を「滑り込みセーフ」と言ってしまうと、何だか後味の悪さが残る。その会社を(偶然にも)早く辞めておいてよかったとは思うが、今後リストラ当事者となるのは元同僚たちだ。もはや俺には関係ないことなのだが、ほんの少しだけ後ろめたいような気持ちになるのだ。大惨事の中俺だけ生き残っちゃった、というような。
 しかしその一方で、大嫌いだった上司の顔を思い出すと「ザマーミロ」というところも正直あったりするわけで。電話をかけてきた先輩とは今度、飲む約束をしている。愚痴を沢山聞きながら、さりげなく元上司たちのリストラ状況を探ってみよう、と密かに企んでいる俺。
 いくらイイ人の仮面をつけても、「他人の不幸は蜜の味。」なんだやっぱり・・・。