足の速い女たちと男の沽券

 「足がはやい」と言っても「腐りやすい」という意味では、ない。
 最近、通勤の時など、女性たちの歩く速度が速くなったように感じる。これは自分が歳をとって遅くなったからということだけではあるまい。朝、駅へと向かう道すがら、スタスタとテンポ良く歩く女性に追い抜かれることがしばしば。俺は自分の歩くペースは速い方だと思っているけど、それでも負けたりする。もちろんそんな女性はスカートは穿いていなくてスリムなパンツ。大概は俺より足も長くて、カッコいいのだ。
 でもそんな時、なぜか女性に抜かれると意地になって抜き返そうとしている自分に気づく。男の人に抜かれても気にならないのに、だ。短い足を必死で繰って、息切らして必死にターゲットを捕えようとしている姿は、ストーカーか!競歩か!あるいはサザエさんのエンディングで家に向かうサザエ一家の一員か!傍から見たらさぞや滑稽に見えるに違いない。ゲイとしての俺は、普段はあまり男女差などというものにこだわらない方なのだが、でも、だ。歩くにしても走るにしても足の速さだけは何故か「女性には負けたくない」っていうのが出てしまう。ナマイキなやつ、みたいなね。これって、俺だけなんだろうか。それとも男(ゲイを含む)の本能的な気持ちなんだろうか?今度、ストレート・ゲイ両方の男友達に、その辺リサーチしてみようかな。
 逆に、メール打ちながら階段をトロトロと下りる女の子、というのはどう思うか?「後ろから小突きたくなる」。他に意見は?なし?全会一致。