春、夢鬱つ。

 40代は不惑の年代。
 瑣末な出来事でいちいち思い悩むことは確かに少なくなったように思う。
 しかし、ふと最近の自分の心持ちを振返ると、小さな憂鬱を随分長いこと引き摺っていることに気付いた。日常生活の中で「それは取りあえず置いといて」と無意識に退けていたことが、いつの間にか澱(おり)のように心のヒダに溜っていて、少しづつ浸食してきたかのようだ。これが鬱の始まりなんだろうか、なんてガラにも無く考えてしまった。
 年齢を重ねるうち、「取りあえず置いといて」が癖になっていて、だからこそ何とか次々と押し寄せる日々の厄介事への対処が出来ている所もあるのだろう。だが一方で、気付かないうちに未処理の思いのあれこれが蓄積しているのだ。そこが怖い。若い感受性ゆえの痛みと引き換えに、若い頃は確かにあった「心の自浄作用」が失われているのだ。
 だから、オヤジ達よ。時折心のひだを丹念に見つめて、溜った澱に一つ一つ光を当てて見よう。そしてそれを溶かす努力をしよう。手の施しようのない迷惑オヤジになる前に。ウツになる前に。
 俺の場合、今のユウウツの糸をたどれば…。これから重くなる借金のこと(家を建てるのだ)、職場の若い奴等のこと(ツルんで辞めたがっている)、最近めっきり落ちた体力のこと(オヤジだし!)、もちろん一人で生きて行く将来のこと(ゲイだし!)、などなど。ふー、けっこうあるもんだ。でもこうして書き連ねるとどれも「まー何とかなりそうじゃん」と思えて来るから不思議だ。俺の場合今はまだ「振り返り」の余裕があるからいいものの、そんな時間もなくなったらきっと本当のウツになっちゃうのかもな。
 さて、もうすぐ春。季節の変わり目だ。なんやかや言ってこのユウウツ、ホルモンバランスの崩れ、ってのがイチバン影響してるのかも。半分オトメだしね、許して。