捨て曲なし!のアルバムって・・・。

サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
 AMAZONのサイトのユーザーレビューには、時折「T-1に泣けました〜。その他も捨て曲なしのお勧めアルバムです!」なんていうコメントが見られる。コメントからすると確かに「聴いてみたい」という衝動に駆られるが、果たして俺が今まで聴いてきた星の数ほどの音楽アルバムの中で、掛け値なしに誰かに薦められる捨て曲なしの作品があっただろうか、と冷静に考えてみた。すると意外と探すのに苦労してしまった。
 ベストアルバムやコンピレーションアルバム、コンセプトアルバムを除外した上で(ジャズも除外)、1曲も飛ばすことなしに聴けるアルバム、それを「捨て曲なし」とすると、驚くほど少なくて、思いついたところでは以下のラインナップになった。

その他にもあるかもしれないが思いつくのは洋楽ばかりだ。それも超有名盤ばかり!(俺ってやっぱり、結局いくら頑張っても小市民なのね。)おまけにこの3枚、実はどれも複数のライターとシンガーを擁するバンド。つまり、形を変えたコンピレーションアルバムにすぎなかったりして。
 邦楽では、残念ながらそんなアルバムは思い当たらなかった。俺のアイドルたち、太田裕美『12ページの詩集』『こけてぃっしゅ』とか、松田聖子風立ちぬ』『パイナップル』なんかは結構「通し」で聴くけど、これはどう考えても俺の思い入れ。今では聴けない全盛期の彼女たちの「声の魔力」に魅入られているだけで、曲はどうでも良かったりする。松任谷由実の『パール・ピアス』、山下達郎『僕の中の少年』、中島みゆき『寒水魚』なんかも収録曲が粒揃いの名作だと思うが、やっぱり1、2曲は捨ててもいい曲がある。
 思えば、アナログからデジタル時代になって、嫌いな曲はすぐにピッ、ピッと飛ばすことができるようになってから、アルバム全曲を通して聞くことが少なくなった。1時間近く集中して聞くことは一種のガマンになっているような気さえする(なかなかゆっくり音楽を聴く余裕が無い、というのも大きいけど)。音楽が消費される時代なのかな、と思う。少し前はウォークマンもカセットテープが主流だったから、嫌いな曲を飛ばすにも電池やテープの消耗が心配で、ビクビクしながら早送りしたり、そうでなければじっと我慢して聞いたものだ。(カセットデッキに「曲の頭出し」機能がついただけで随分画期的だったのだ。)今では、先に挙げた3枚にしてもその日の気分によっては飛ばしてしまう「実は聴くのが面倒な曲」というのがあったりして、本当に音楽は水物なのである。昔好きだった曲を「聞きすぎて」嫌いになったりすることもよくあるし。
 但し、これはあくまでも飽きっぽい俺だけの話であって、音楽鑑賞の時間を大切にする人には、大好きな捨て曲なしのアルバムが沢山あるのかもしれないね。きっと。