通勤電車の忌々しい人々〜メイクアップ女

 今朝、通勤電車で久しぶりに座れてほっとしたら、膝に置いた鞄の中をガサゴソと探る若い女が正面に座っていた。そのうちに、始まった。化粧が。
 ファンデーション、眉、アイライン、頬紅、唇と、手鏡を見ながら一心不乱に自分の顔を「よそ行き」に作り上げていくその姿。見ていてとても不快だった
 ある調査では、男女問わず約6割の人が電車内での化粧を「マナー違反・気になる行為」と感じているという。俺だけじゃないんだ。しかし、何故不快に感じるのだろう。化粧する姿はたしかにアイラインの時に白目を剥いたり、ついでに鼻の下が伸びたりの百面相ぶりがみっともないのは明らかだが、主旨としては「綺麗になるための行為」であって、猥褻行為とは違うし、音や臭いを発するわけではない。なのに何故こうも不快なのだろう。行為を続ける彼女を見るともなしに見ながら考えていた。
 きっと、こういうことだ。本来はプライベートな行為であるはずの化粧を公衆の面前で行うということは、目の前にいる人を人として意識していない、ということだ。「私が綺麗になるのは、もっと大事な人に会うためよ。あんたたちみたいなカボチャどもに見せるためじゃないのさ。」と暗に周りに宣言しているようなものだからだ。つまり、人としての存在の完全無視。大いなる侮辱。
 当人にそんな気は少しもないのだろうが、男女問わず「気になる」というのは、そういう所に原因があるのかも、なんて思った。携帯にしても、飲食にしても、車内の迷惑行為の多くは公共の場への「プライベートの持込み」、なんだよね。考えてみれば。
 そんなことを考えているうち、化粧を終えた若い女はペットボトルのお茶のがぶ飲み行為に及び、飲み終えると俺をジロリと睨み付けた。「ナニ見てんのよ!」みたいに。睨み返そうと思ったが、思わず視線そらしちゃった。俺の負け。