日常に潜む恐怖〜スライサー編

 酒のつまみにオニオンスライスは最高だ。俺はその夜、ひと仕事終えた心地良い疲れを癒すべく、缶チューハイが冷蔵庫で冷えるのを待ちながら、台所に立って好物のオニオンスライスを作ろうとしていた。玉ねぎは血液サラサラ効果があるって言うしね。
①玉ねぎを半分に切る。
②スライサーに玉ねぎの平面を当て、鰹節を削る要領で玉ねぎをスライサーの刃上にスライドさせる。(スライサーは100円ショップにて購入。大根おろし兼用のやつ。)
③スライサーを通ってチップス状になった玉ねぎを水にさらして辛味をとる。
④③を水切りして和風ドレッシング、鰹節を少々かけて出来上がり。
てな具合に3分クッキングを試みたのだが、②の作業に移った時、それが起こった。
ガリッ! 鮮血・鮮血・・鮮血・・・。
見事に「親指」をスライス。  ぎゃあ〜〜。
あわてて絆創膏をきつく巻いて止血したが、血はとまらないわ、痛いわ、ひとりパニック状態である。負傷箇所は右手親指。利き手でない方の覚束ない手でおのれをケアする、この不便さと不憫さ。独りでいる気楽さの代償はこういうことなのだな、と感じさせられた夜であった。
 日常にはどんな恐怖が潜んでいるかわからないものだ。