通勤電車の忌々しい人々〜俺が悪いんだけど

 先日、帰りの電車で座ったら、また爆睡してしまった。ここのところ疲れが溜まっているのを自分でも感じている。その日も、座ってから次の駅の記憶もないほどに、ものの2分も立たないうちの入眠。
 心地よい揺れに身を任せての束の間の睡眠は、とても気持ちが良い。
 しかし、その日の至福のひとときは、不快な気分とともに無残に断ち切られることになった。
 ドン、と強烈なヒジ鉄!
 え? ここはどこ? 今のは何?はっと目を開けて、鉄槌が飛んできた右横に目をやると、白いパンツのすらりとした2本の足が横に並んでいる。多分、熟睡に入っていた俺は、この、隣に座ったつんと澄ました女に、体重をかけてもたれ掛かってしまっていたらしい。それはそれで申し訳ないことだ。
 しかし、俺はそのヒジ鉄に込められた、あまりにあからさまな「敵意」「憎悪」のようなものにびっくりして、彼女に謝罪の気持ちを示すことが出来なかった。
 確かに、横に座った人が爆睡して凭れかかってくるのは不快だ。酔っ払いなんかは特に。そんな時、人はどうするか。
①自分が座り直したりして、さりげなく相手に刺激を与えて眠りを覚ます。
②立ち上がって別の席に移動する。
③肩を叩くなどして直接起こして注意する。
 俺の場合は上の3つだ。電車が空いていれば②。それ以外は大概①の方法を取る。③は、長距離移動でかつ電車が混んでいて相手の眠りが深い場合の最終手段。つまり、俺の辞書には「ヒジ鉄」なんて有り得なかったのだ。
 そもそも、電車の中では、いくら爆睡と言っても、五感の大部分は完全に寝ていなくて、自分の降りる駅に近づけば自然に目が覚めたりする(酔っ払いは別だけどね。)。だから、少しの刺激を与えてあげれば、大概の人は「あっ」と気づき、常識的な人であれば、すぐに軽くお詫びの会釈さえ出来るのだ。
 それに対して「ヒジ鉄」は、顔をひっぱたいて起すのと同じではないのか。そこには相手への思いやりとか、尊重というものがかけらも感じられない。自分の「不快感」にのみ反応した直情的行動のように思える。あんたは電車で絶対に寝ないのか?疲れないのか?
 また少し、人間嫌い・(若い)女嫌いが続くきっかけになりそう、な出来事だった。