「砂の女」

砂の女 特別版 [DVD]

砂の女 特別版 [DVD]

 1964年作品、ということは41年前の映画。監督・勅使河原宏アカデミー外国語映画賞ノミネート、カンヌ映画祭審査員特別賞受賞の、知る人ぞ知る傑作。原作者の阿部公房も脚本に加わっているだけあって、小説の映画化と言うよりは、この映画版の方が作者の意図を忠実に表現しているのではないか、と思えるほど。時折挿入される流砂のイメージカットや、不安をあおる武満徹の音楽が非常に効果的に使われているためだ。ただし、長尺なため、原作を知らないと中盤やや中だるみがあるかも知れない。
 主演は男が岡田英次(逞しくて素敵!)、女は岸田今日子。最初、岸田今日子演じる女の愚かな図太さに軽蔑心を抱かされ、中盤からは妖しさ、そして可愛らしさにハッとさせられる。はまり役!
 映像はスタイリッシュ、かつシュールだ。例えば、男と女が懲らしめのために水を絶たれるシーン。岸田今日子の喉がじわじわとクローズアップされ、汗が浮き砂が絡みついた白い喉仏が水を求めてうごめくシーン。人間という生物の避けられない本能、そのエロティックさを驚くほど饒舌に表現した映像だと思った。それ以外にも、誰が観たとしても、忘れられないようなシーンが必ず1箇所は見つけられると思う、好き嫌いは別として。
 決して歳月を感じさせない、日本映画の至宝の一つである、と俺は思う。