本当は手をつなぎたいんだ。

 三連休の中、デートした。ふたりで繁華街をぶらついて、お昼食べて、カラオケして、また町中をぶらつき・・・すっかり「人酔い」したころに大きな公園で気分を癒して・・・。と、まあ、何の変哲も無いデート。
 ただひとつ、周りの人から見たら少し違和感があったかもしれないこと。それは俺たちが二人とも「男」だったってこと。
 とは言っても、人前で手をつないだり腕を組んだりは勿論しない。同性同士のそういった行為に不快感を示す人々も少なからず存在するだろうからだ。
 多分、見る人が見れば、妙に仲が良さそうだったり、並んで歩く距離が異常に近かったり、ということはあるのだろうが、多くの人は俺たちに興味はないわけだし、俺たちも特別意識しているわけでもないので、通常は全く問題なく街に溶け込んでしまっている(はずだ)。多分、同性の友達同士と認識されて。
 しかし、その日、その図式が一瞬にして崩れる瞬間を体験した。
 デート中、俺の職場の同僚(女性)とばったり会ってしまったのだ。
 「あ、○○さん...」声をかけられた瞬間、俺は凍りつく。彼女の目は、俺と、隣の彼とを行ったりきたりしている。
 「き、今日はナニ? めずらしいね・・・」と俺。こわばる笑顔。
 その日、仮面を取って人ごみに埋没することで、名前もしがらみも忘れ去り、二人だけの自由な時間に心地良く身を任せていた俺たち。それがあっという間に元の窮屈な現実に引き戻された。
 この社会で俺が俺として生きていくために着けなければいけない仮面。
 「彼、後輩。久しぶりに出て来たんで東京を案内しようと思ってね・・・。」
 必要もないのにその場を繕っている俺。あ〜あ。

 こんな毎日が、本当に息苦しくてイヤになった瞬間。
 本当は、胸を張って、手をつないで歩きたいんだ、俺たちだって。

 でもやっぱり、必要な場所では、仮面をつける。これが俺の生きかた、なんだろうな・・・。