「運命じゃない人」&「バッド・エデュケーション」

 両方ともDVDにて鑑賞。休日、さあDVDを見ようとレンタルショップに足を運んで、正面には話題作がこれ見よがしに並んでいる中で、わざわざ棚の隅っこにひっそりと置かれた作品を2本も選ぶなんて、我ながらひねくれてるよなあ、と思う。
 1本は前々から評判を聞いて「観たい」と思っていた日本映画「運命じゃない人」。もう1本はゲイムービーということで興味津々だったP・アルモドバル監督作「バッド・エデュケーション」だ。この2作品、題材もストーリーも全然違うのだけど、よく練られたストーリー(または脚本)がともに秀逸で、どちらもすご〜く面白かった。
 「運命〜」はいわゆる群像劇だが、主役の視点が入れ替わりながら、しだいに時間と空間が交差して思いもよらぬ展開を見せていく、その謎解きめいたストーリー展開がとても痛快だった。中心となる主人公がなんとも朴訥とした好人物であることがミソ。「運命じゃない人」というタイトルは、優しく平和なひとりの人間の運命と、その人物の平和な運命の形成に関わっている、多くの平和でない人物たちの関係性を表現しているものかもしれないのだ。
 この作品、ひとことで言えば「面白い映画」なのだけれど、近頃の日本映画にありがちな、サービス過剰な笑いや涙で誤魔化した「面白さ」とは一線を画したものになっている。映画はあくまでも映像(カット割)と脚本(の内容)で勝負するのだという意気込みを感じた。例えば黒澤映画の「天国と地獄」「隠し砦の三悪人」にも通じる、昔ながら映画人が作った骨太なホン(脚本)、と言ったらオーバーかな?いずれにしても、監督・脚本の内田けんじ氏の、これからに期待。

運命じゃない人 [DVD]

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 変わって「バッド・エデュケーション」。こちらは劇中劇の妙味を存分に味わえる作品。劇中劇と劇中現実とが一体となって絡み合いながらストーリーが進み、登場人物たちにまつわる謎が次第に明らかになっていく構成だ。(ちなみに作品の中での主人公は映画監督で、ここで「劇」とは映画を指す。)劇中劇を含む名作といえば、薬師○ひろ子の「Wの悲劇」が挙げられるけど(「顔はぶたないで!ジョユーなんだから!」)あれはどちらかといえば良く出来たバックステージもの、という分類かもね。映画監督を主人公に置き、映画のフィクション世界と現実を融合させた傑作といえば、Fフェリーニの「81/2」を忘れてはいけないと俺は思っているのだが、本作「バッド・エデュケーション」は、分類上、上記2作の中道を行く作品とも言える。劇中現実と劇中フィクションとの狭間に迷い込み、現在と過去を何度も行き来させられるけど、とにかく脚本がしっかりしているから、観客はただペドロ監督のテクニックに身を委ねてれば、後はサイコーの楽しみが待ってるよ、てな感じ。わかる?
 原色を効果的に配した映像も美しいし、主人公ガエル・ガルシア・ベルナルの妖艶な魅力、憂いをたたえた瞳、そしてきれいなお尻もGOOD!でした。
 以上、たまたま同時に見たこの2作品、見終わってみて、①練られた脚本、②時間と空間が交差するストーリー、という2点が共通していることに気付いた。我ながらなかなか良いチョイスをしたものだと思った次第である。