おすすめ本〜「逝きし世の面影」

 ゲイである自分としちゃ、この現代が、やっと何とかフツウに生きていける世の中で、あと百年早く生まれていたらきっと過酷な人生を歩んでいたかもしれない。
 でも、この本を読むと、もしかしたら、そうでもなかったのかも・・・。そう思えてしまう。
 幕末から明治維新期に日本を訪れた多くの外国人の目を通して記された、ありし日の日本人の活き活きとした姿。それは確かに俺が子供の頃にもわずかに生き残っていた、本来の日本人のすがただ。慎ましく、朗らかで、下層民までもがその行動にある種の優美さを備えていたという。
 もう決して戻れない世界ではある。でも、この国にこの本に書かれているようなある種「完璧な」生活が確かに営まれてきたことを、そして彼らの生き方にこそ学ぶべきことが多いことを、子孫である我々はあまりに知らなさ過ぎる。欧米に追従することの愚かさを反省しなければいけない。

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)