フンガイしている毎日

 俺が政治に興味を持ったキッカケ。
 障害者自立支援法がこの4月より施行された。ほとんどの国民はこの法律の内容を知らないだろうし、端から興味も無いに違いない。去年の解散総選挙で一度廃案になったものだ。
 要は、今まで通りの福祉を得たければ、たとえ障害者といえども相当の金を払え、という法律だ。名目上では障害者も自立した生活を送るために就労を始めとして様々な支援をする法律、ということになっているが、何のことはない、福祉を切り捨てて財政支出を抑えるための政府の方便に過ぎない。
 これがどれほど弱者である障害者を痛めつけるひどいものであるか、その実態の一部をご紹介しよう。
 例えば、この法律では支援にかかる費用については利用者の一割負担が義務づけられているが、障害が重いほど負担も重くなる仕組みになっている。これを考えたお役人の言い草はこうなのだ。「障害が重ければそれだけ手がかかるわけだから、費用もかかる。その分は本人が負担して当然でしょ。」障害が重いということはそれだけで本人の日常生活での不便さは計り知れないものがある。介護する家族の負担は「言わずもがな」だし、補助が出るとはいえ住む家の改造費、補助具など、持ち出しも当然多い。その上にこれからは、障害者がほとんど「生活の場」としている施設でさえ、行くだけで利用料が取られてしまうようになるのだ。それも障害が重いほど高い料金でね。本人が好きで障害者になるわけでもないのに、そのように生まれたことで、一生金を払わされる人生だったら、あなた納得できます?
 授産施設というものをご存知だろうか。簡単に言えば身体や知的に障害があって、一般企業への就職が難しい人が、施設で請け負ってきた内職的仕事に就き、社会参加を果たすと同時に就職の訓練を行う施設だ。ここで障害者は、実際に仕事をし、賃金を得るのだが、これがすこぶる安い。多くは単純労働の歩合制だから致し方ないが、平均で1ヵ月数万円がやっと。ところが今度の自立支援法により、施設の利用料が発生してしまう。つまり、給料をもらうために会社で働くのに「会社利用料」を天引きされる、というようなものなのだ。バカにした話なのである。
 つまり、名前は自立支援法でも、バイアスは限りなく障害者を引きこもらせる方向に向いている悪法なのだ。つまり、金をかからなくする、ね。
 また、施設等で出す食費は原則、実費負担になった。まあ、ある意味当たり前の話ではあるのは承知だが、実はここもツッコミどころ満載。ちなみにその基準価格として国が提示しているのは、昼食で1食650円というもの。食材費+人件費をはじめ調理にかかる費用、ということで、ここでの言い草はこうだ。「健常者が外で食べればそのくらいは普通にかかるじゃん。」
 あなた、毎食650円を払う?俺だったら迷わず500円のワンコインランチに走るけどね。あと「ほか弁」とかね。実際、この食事代が公示された後、施設での食事を拒むどころか、施設を利用しなくなった障害者も出てきた。本来、食事は人間にとって大きな楽しみであり、かつ健康に生きるうえでの要だ。特に障害者にとって、しかるべき支援を得て食事管理をしないことには、生死にかかわる問題になりかねないものである。それを得るために割高な食費を払わねばならなくなるということだ。
 もちろん、「一応」、福祉ということで所得の低い層からは食材費だけ取って、その他は免除しても良い、という救済策は講じられた。それは良しとしても、どうしても納得いかないのは、その差額(つまりは調理にかかる費用)を一割負担なさい、となっていることだ。つまり、安くしてあげた分は「支援している」わけだから、そこからも一割もらうよ、ということだ。まるで詐欺。
 総じて、国が実に巧妙でズルいと思うのは、これらの支援費は4月から全部、日額計算(これまでは月額計算だった)に変更になっていて、実際は前年度より大幅にカットになっているにもかかわらず、それを表面から隠していることだ。福祉事業者側からみれば月額換算にすると軒並み2〜3割減となる。その上当事者の一割負担があるから、財政支出はさらにその9割で済む、というスンポーだ。これを考えた官僚のズル賢しさに怒りすら覚える。そして、解散総選挙、絶対多数獲得で、碌に審議もしないままこの法案を通してしまった小泉自民の横暴にもね!
 それでいて、収賄汚職の温床であり国の財政破綻の原因たる特別会計にはどこまでも手ぬるい「行革推進法案」をするっと通してしまった小泉さん。弱くて取りやすいところから金をむしりとり、弱者への補償をないがしろにして、強者・権力者・大企業へのあからさまな優遇で「数字上だけの好景気」を作り出し、名を残すことに懸命な小泉さん。それでも口をとんがらせて「格差はどこにでもある。悪いことではない。」と言い張る小泉さん。
 誰が擁護しようと、俺は、彼を絶対支持しない。