ピンク・レディー「DO YOUR BEST」

hiroc-fontana2006-04-20

 俺にとってPLは小学校から中学に上がる頃の、もろ「ど真ん中アイドル」。さすがにオトコのコだったので、当時一緒にダンシンはできなかったけど、頭の中ではバッチリ振り付けはマスターできていたみたいで。「みたいで」っていうのは、実はオトナになって酔っ払って、ゲイのトモダチと調子に乗ってカラオケでPLを歌ったら身体が動く動く、自分でもびっくりだった。
 でも当時からあくまで俺にとってPLは見るものであって、聴くものではなかったのだ。あの激しい踊りのせいで、テレビでのPLの歌はいつも息切れしていたし、動きまくるハンドマイクはきちんと声を拾えていなかったし、要は「聴くに値しない歌」、それが俺の「リアルPL」だったのかもしれない。
 そんなピンク・レディーを「ベスト・ヒット・アルバム」のCDで初めて真剣に聞いた。
 艶やかな声がよく伸びるミー。ハスキーでソウルフルなケイ。立ち上がりのいいミーの声を幅のあるケイの声が包む。この二人の特徴的な声がユニゾンでぴたりと混ざり合う、その心地良さ。そして時折見せるハーモニーのダイナミズム。30年経って初めて真面目に聴いたPLは、俺の記憶以上に実力派の顔を持っていたのだった。
 そういえば、ピンクレディーアメリカ進出を果たす前の78年、とある土曜日の昼にテレビ放映されたピンク・レディーのラスベガス公演を俺は見ていた。そして、彼女らが歌う洋楽ナンバーの数々から、国内の歌番組では決して見られない、ショーマンシップに長けたプロのパフォーマーとしての彼女らを確かにそのとき感じた。それをふと、思い出したのだった。
 今では結構有名な話だが、T&Cというプロダクションとビクターが莫大な費用を投じて発足させたプロジェクト、それがピンク・レディーだった。それに値する実力を備えた素材であったわけなのである。子供の俺には「ペッパー警部、よ!」なんてキメゼリフもただのキワモノにしか思えなかったのだが・・・。しかしなるほどこのデビュー曲、あらためて聴けばカップリング「乾杯お嬢さん」ともに詞・曲・ボーカル・アレンジ、どれをとっても素晴らしい出来だったりする。それはきっと、歌謡曲の幸せだった時代の残像でもあるのだ。歌手をはじめそれをとりまくスタッフが一丸となって、良いものを作ろうとしていた時代の話。
 「DO YOUR BEST」(1979.12月発売、詞:伊達歩、曲:都倉俊一、編:井上鑑)は、いよいよ人気下降に歯止めが効かなくなった頃の作品。この年のPLは、ヒデキの二番煎じとはいえピンクレディーの本来のパワーが生きた名曲「ピンク・タイフーン」、かつてのPLとアメリカ進出期の雰囲気のブレンドが成功「波乗りパイレーツ」、本格的ディスコ・サウンドでその資質を開花させた「マンデイ・モナリザ・クラブ」と後期の名曲群が続き、その流れの中で、徐々に大人相手のエンターテイナーへと脱皮を図っていた。この「DO YOUR BEST」は、阿久悠の手を離れ、さらにアメリカを意識した音作りで、ハードロック路線だ。イントロはEW&F「宇宙のファンタジー」だし、導入部分はELOの全米ヒット「Don't Bring Me Down」そのもの、全体の印象は「マイ・シャローナ」だったりと、パクリのオンパレード。しかし、Aメロのモールス信号のようなワンノートのフレーズや、コード進行は今聴いても斬新。当時、最初はヘンテコに思えたこの曲、不思議に耳に残る曲で、久しぶりに聞いても全部ちゃんと覚えていたのは、やっぱり好きな曲だったのかな?オリコン最高位は惨敗の36位。確か、ボイコットになったモスクワオリンピックの応援歌だったような気がする。それも落ち目のPLにはなんだか象徴的に思えたりして。
 寂しいラスト曲「OH!」も、二人のシンガーとしての実力に今更ながら目を見張る作品。とにかく、あのバッシングさえなければ、もっとカッコイイPLが見続けられたのかもな〜なんて思うと残念ではあるのだ。
 それにしても、このジャケットのケイちゃん、すごく変な顔してる。ほかの写真、なかったのかしら。