安っぽい筋書き

 共謀罪にまつわるこの一週間のドタバタ劇を見て、民主党案を丸呑みという自民の奇策・国民を無視した政治ゲームに対して憤るか、対案丸呑みを提案されながらも採決を拒否した民主を「分からず屋の天邪鬼」と見て憤るか、どちらの立場で物を見るか、によって今自分の置かれている環境(あるいは所属階層)がわかるのではないだろうか。1年前までの俺のように「全く無関心」という層もかなりの数にのぼるのだろうけど。
 俺はいま反小泉・反安倍・反ブッシュ・(そして非富裕層)なので、もちろん前者の立場で今回の動きを見ていた。1日の晩に「自民党民主党案を丸呑み、共謀罪採決の見込み」というニュースが報じられたとき、暗澹たる気持ちになったと同時に、こんな小手先のテクニックを使ってまで採決に持ち込もうとする自民党執行部に対して怒りを感じずにはいられなかった。
 ある悪代官のセリフ。「ここはとりあえず民主案丸呑みじゃ。これなら向こうさんも、嫌とは言えないじゃろう。一度国会を通ってしまえばあとはどうとでもなる。見てのお楽しみじゃ。」そんな安っぽい筋書きにしか見えない、幼稚で、下品なやり口、国民無視の政治ゲーム。
 気に入らないのは、ここにも「勝ち負け」の論理が幅を利かせているところだ。勝つ(採決にもちこむ)ためにはもはや、手段は選ばない。「民主党案では国際条約の批准は無理」と言っていたにも関わらず丸呑み。そんな論理の破綻さえ目を瞑るということだ。一般庶民はバカだから無視しておけばいい。とにかく、自分たちが勝つことがすべてに優先する。これが現在の今の小泉自民の真の姿なのであり、小泉改革によってもたらされた今の日本の風潮、その縮図に見えなくもない。(そういえば、逮捕されたムラカミ某が「私が憎まれるのは儲けすぎたから」と言って開き直った姿と、小泉さんがかつて「成功した者を妬む今の社会が問題だ」と国会でノタマった姿とがダブって見えたのは私だけではあるまい。)
 ところで結果的に自分たちが提案した対案を認めることができなかった民主党はもちろん不甲斐ないが、それでも奇策に応じずに踏ん張ったことは評価すべきだろう。相変わらず「危うさ」を露呈する結果にはなったけども。民主党を「分からず屋の天邪鬼」とする評価は、共謀罪の内容・その危険性を無視した短絡的な見方のように思う。たぶん、ここ数年の目まぐるしい変化を肯定的に受容できている人(たとえばプチバブルを謳歌しているシアワセな人たち)だけが、この拙速な自民の改革を応援しているのだと思うのだが・・・。
 しかし、ここまで乱暴にこの法案を通そうとするのは、首相の外遊手土産にするため、というのが大方の見方ではあるけれども、それ以上にやはり急がねばならない別の意図(何らかの圧力)が隠されているような気がしてならない。
 小泉政権ってのはあまりにも怪しい動きとか普通じゃない動きが多かった分、素人目にも「なんか変!」と思わせてくれる、ある意味「わかりやすい」政権だったのかもね。功罪をあげるとすれば、これだけは彼らの「功」と言えるかも。)