バラの誘惑

「留守だったんで○○を冷凍庫の中に入れといたよ。」
 近所に住む親戚から携帯電話に留守電が。○○はよく聞き取れなかったが、家に帰るとバラ肉のブロックがフタ切れ、冷凍庫の中に入っていた。俺は中年一人暮らしなので、まさかの時のために親戚にカギを渡しているのだ。
「冷凍しておけば暫く持つから、食べる分だけスライスして解凍してね。」とのこと。だけど、ブロックで肉をもらうなんて初めて〜。うれし〜。てなわけで、俺の頭の中にはもうその時点から「角煮」しか無かった。スライスするなんて柔なことしないぜ!みたいな勢いだ。そしてすぐさまネットで角煮のレシピを検索。
 わかったことは、まずは肉を水から茹でるのが良いらしい。あと、味付けは醤油とみりん・酒であとは好み、みたいなアバウトな感じだということ。なんだ、簡単じゃん。
 気の早い俺は早速「茹で」にとりかかることにした。鍋に肉を1ピース入れ、それがヒタヒタになるくらいに酒と水を入れて、火にかけた。
 そして約5分後。ん?何だか肉がおかしい。すごく色が綺麗・・・。
 ベーコンだった。
俺は、「ベーコンの角煮」を作ろうとしていたらしい。そういえば「スライス」って・・・。しばらく、「茹でベーコン」が食卓を飾ることになりそうだ。