カバー・アルバムは好き?嫌い?

 松田聖子のニューアルバムは洋楽カバー・アルバムの第2弾だそうだ。15年前にリリースされた第一弾「Eternal」は、聖子の声が絶好調だった上に、GOODな選曲と絶妙な訳詞で素晴らしい出来だったので、今回も期待したいところだ。Eternal II
 ここのところ、ちょっとしたカバー・ブームと言えるのかな?「歌姫」明菜をはじめ佐藤竹善徳永英明渡辺美里、マッキー、岩崎宏美なんかが、一人で何枚もカバー・アルバムをリリースしている状態。(海外でもロッド・スチュワートがそれで一儲けしているみたい。)変わったところでは林檎ちゃんやボニーPinkなんかもあったね。でも、俺はどちらかというと、カバー・アルバム否定派。やっぱりカバーっていうのは、あくまでも「いい曲発掘」的な意味合いでもって、オリジナルアルバムの中で「キラリと光る1曲」でとどめておいて欲しいのね。有名歌手によるナツメロカラオケ大会、的なものではなくね。だって、なんだか自己陶酔が入っちゃって、つまんないモノが多いんだもん(笑)。もちろんファンにとっては、好きな歌手の新しい声が聴ける、というだけでも嬉しいのだろうけど、みんなホンネは、カバーではなくて正真正銘の新曲が聴きたいのだと思う。
 カバー・アルバムを出す歌手側の論理としては、セルフカバーなんてヘンテコなものも含めて(ユーミンやみゆきまでもがセルフカバーをするとは思わなかった・・・)、今の自分を表現したいとか、歌手としての成長した自分の力量を試したいとか思ったときの手っ取り早い方法が、若い頃の自分の歌を歌いなおすとか、昔好きだった曲を自分なりに歌う、ということになっちゃうんだと思う。あと、好きな曲に新しい息吹を加えたい、僕(ワタシ)が知ってるこんなにいい歌を皆に紹介したい、みたいなのもあるのかもしれないけど、これは歌手のイイワケっぽいよね。
 一方カバー乱造のもう一つの理由として、商業音楽界にいわゆる自作自演の台頭で「曲を作る人=歌う人」という構図ができあがってしまっていて、ヴォーカリストが依頼すべき職業作家がいなくなっている業界事情もあるのかな?と想像するのだ。自作しない(できない)ヴォーカリストとしては、自分が満足できる曲をCD1枚分発注することは、よほど第一線の歌手で無い限り、難しくなっている現状があるのではないかと。予算的なものとか。聖子がいくら批判を浴びてもなかなか「セルフ・プロデュース」から抜け出せないのも、そんな事情があるかもね。THE SELECTION OF CORNERSTONES 1995-2004(アルバム+DVD) Candy
 そんなわけで、俺はあまりカバー・アルバムは好きじゃないんだけど、決して全否定しているわけではなので、最後にオススメものを少しだけ紹介。先に挙げた佐藤竹善の「Cornerstones」シリーズは選曲のセンスが自分の好みにピッタリなので(年代が同じだからね)、楽しめた。歌も文句なしに上手いし。フェイバリットの太田裕美さんは99年のミニアルバム『Candy』で「はっぴいえんど」の曲をカバーしているのだけど、緻密で繊細な音作りが素晴らしい1枚(ただし、当初収録予定だった鈴木茂の作品「風信子」は別のベストアルバムに入っている)。あとシブイところでは沢知恵さんという人の『いいうたいろいろ』というアルバムは、 いいうたいろいろ意表をついた選曲と個性的な歌唱が光るマニア向けで、一時よく聴いていた作品。機会があったら聴いてみて欲しい。最後は、キョンキョンの『ナツメロ』(88年)。カバー・アルバムを楽しく聴かせる見本として、各アーティストさんにこそ聴いて欲しい、テキスト的作品。