ドラマ「魂萌え！」

　なんだか低調だった年末年始のテレビ番組のなかで、１２月２３日の夕方に地味〜に放送されたこのＮＨＫドラマがイチバンの収穫。もとは１０月に３話完結で放送されたものなんだけど、それを３話分まとめて再放送していたのね。
　原作は桐野夏生の小説。一言で言えば亭主を亡くした普通の主婦の魂の再生の物語なんだけど、夫が亡くなったあとで１０年来の愛人の存在が明らかになったり、成人した子供たちが遺産目当てで突然近寄ってきたり、主人公自身も不倫の当事者になっちゃったり、とエピソード盛りだくさん。３話分まとめて３時間があっという間の面白さでした。
　主役を演じるのはトーク番組でもフツーのオバサンキャラで売っている高畑淳子。（名前聞いても顔が思い浮かばないヒトも多いんじゃない？）民放では考えられないこのキャスティングが大当たりで、実は実力派だった高畑さんの、地味なフツーの主婦が薄皮をはがすように生き生きとした一人の女性に変身していく様を見事に演じきるその演技力を見られただけでも貴重な作品なのじゃないかな。それ以外にも愛人役の高橋恵子が狂気と悲哀が入り混じった怪演を見せてくれるし、脇役の３羽婆、小柳ルミ子・仁科明子・木野花もそれぞれの持ち味を出し切っていて、女優陣はオキャマも大喜びな濃密な香りプンプンの個性派揃い。男優も、「実はヤリ手だった」おっさん亭主役は大和田信也でこれもはまり役。したたかだけど憎めない息子役には山本太郎、高畑演じる主婦の再生物語のキイパーソン・人懐こい好男子役の宇梶剛士もとても魅力的で、全体にキャスティングがよく考えられているな、と思う。
　ＮＨＫドラマといえば、古くは「私は貝になりたい」とか「阿修羅のごとく」とか最近では骨太な原作を見事にドラマ化した「クライマーズ・ハイ」といった、映画に遜色ない、むしろ映画には無い緊張感に満ちたハイレベルなドラマが少なくないけれど、この「魂萌え！」はちょっと地味だけれど、その系列に並べても決して恥ずかしくない力作ドラマだったように思う。
↓公式ページ（期間限定かな？）
http://www.nhk.or.jp/drama/archives/tamamoe/
　そういや、映画化されるのね、この作品。ちなみに主役は風吹ジュンだそうだ。このドラマ版がもしついでにＤＶＤ化されたらぜひそちらも多くの人に見て欲しいと思う。