『Eternal Ⅱ』

Eternal II
 せ、聖子ちゃん。違う、違うんだってば〜!
 つくづく、松田さんっていうのは「政権与党」だなあ、て思う。安定した支持基盤を持って政局運営しているんだけど、肝心なところで国民の声が届かないのよねえ。なんだかどんどん「ひとりよがり」になっていく感じ。それが、冒頭の叫びなわけね。
 昨年12月発売のこのカバー・アルバム。決して悪くないとは思う。洋楽カバーというのはとても聖子らしいアプローチだと思うし、91年の『Eternal』第一弾も素晴らしい出来だったので、洋楽との相性の良さは実証済みだ。特に今回の作品は全編英語で歌っているので、ほとんど訳詞で歌われた第一弾『Eternal』にはあちこちで見られた彼女独特の過剰な感情移入がほとんど感じられず、むしろ90年代後半に全米発売されたアルバム群に近い印象があってその意味では新鮮。つまりは「アイドル聖子」臭が極端に排除された印象ね。ここでの聖子は、コンテンポラリーなアダルト・シンガーに徹していて、日本での聖子人気の源ともいえる「しゃくりあげる泣き声」や「喉を絞めた吐息声」はほとんど使っていなくて、さらりと歌い流しているのだ。そう、これは聞き流せるアルバム。そこにあるのは聖子の「声」のみ。これを心地良いと思うか、つまらないと思うかは、聖子に対する思い入れで大きく変わってきてしまうと思う。
 でも、だからこそ『Eternal Ⅱ』はその意味で、中途半端な作品になってしまったように思う。だって、これだったら、もっと本気で全米発売向けのアルバムを作ったらいいじゃん。ファンが聴きたいのは、そんな気合の入ったアルバムか、そうじゃなかったら聖子臭プンプンな日本語アルバムなんだから、ね?そうじゃない?英語の発音もちょっと中途半端にヘタになってるし。
 そうは言っても「How deep is your love」のボーカルはやっぱり気持ちいいし、「The most beautiful girl in the world」「Time after time」のウィスパー・ボーカルはそれなりに新鮮だし、「These dreams」はミステリアスでいい雰囲気だし、で、うん、やっぱり悪くないのよねこれ。う〜ん複雑。