安室奈美恵『PLAY』

 ホント、最近こればっか聴いてます。ハマってます。まず感想。
 アムロちゃん、もう完全にジャネットになったね!
 これはアムロちゃんへの最大限の褒め言葉よね。一時は「若くして結婚→出産」というその生き方のなぞり方からして、「ローリン・ヒル!」て言ってあげるのがイチバンの褒め言葉だったかもしれないけど、当のローリンちゃんは消息不明な感じなので、近年は冴えなくともやっぱり20年選手の「重鎮」ジャネット・ジャクソン、てのがアムロちゃんへの賛辞として相応しいと思う。何気にアムロちゃんのキャリアもかなりのものになってきてるし。
 俺は90年代の以降のジャネットが大好きなんだけど、近年の作品は刺激的な割りにちょっと単調でつまらないな〜という印象があって(もう最新の洋楽にはついていけなくなってるのかしらね)あまり熱心には聴いてないのだけど、完全にそれに取って代わってしまうのが、アムロちゃんなのね。もう、ジャネットの新作、として聴いちゃってる、みたいな。本人の多重録音による分厚いコーラスとか、スベスベしたウィスパー気味のボーカルワークとか、意外にチープなリズムセクションまで、いっときのジャネットそのもの。前作『Queen of Hip-pop』では、明らかにパクったな、というフレーズのがチラホラ見えていたけど、この『PLAY』ではたとえば「Baby Don’t Cry」がジャネットのヒット曲「Someone Call to My Lover」に似ているといっても、しっかり換骨奪胎でアムロちゃんの曲として消化されているのが凄いところ。(ジャネットじゃないところからパクってるのかもしれないけどね・・・それは置いといて。)
 聴いていると、もう洋楽とかJ-popとか関係ない、って感じ。歌詞にしても、もうメロディーへの日本語の乗せ方が、従来の「邦楽・J-pop」から完全に逸脱していて、英語の曲を聴いているときと同じように単なる「音」として聴こえてきてしまう。そういうつくりになっている。だから、詞が邪魔をすることなくアルバム全編を通じて気持良いグルーブ感があるし、何度でも聴けちゃう訴求力が出てくるんだと思う。
 「CAN'T SLEEP,CAN'T EAT,I'M SICK」はその意味でホントに凄い曲。バンザーイ!(俺、この曲をヘッドフォンで聴くと自然と「モデル歩き」になっちゃう。どうでもいいけど。皆さんも試してみて。)
 それにしても彼女、トークなどを聴いていても天然ボケかましているようでいて、実はとてもクレバーなんじゃないかな、と思う。「コムロ後」の身の振り方なんか見てると、ちょっと落ち目で辛かった時期もちゃんとこの今の立ち位置を念頭に置いてキャリアを重ねてきている感じがするのが凄い。カハラさんとは大違いね(笑)。そして見事に復活して、自分のやりたかった世界で二度目の花を咲かせているわけね。このテーマについては過去ログをご覧ください。
 アムロちゃんに見る、正しい復活劇 - Lonesome-happy-days
 『Queen of Hip-pop』というタイトル、最初に見たときは「ヒップホップのクイーン、ってあんた宣言しちゃうの?」と思わせながら良く見るとヒップ「ポップ」になっていたり。これってつまり、日本人だから、最初からヒップホップの世界でアメリカさまに勝とうなんて思っちゃいない、という白旗宣言なわけね。だから、今やっと5年前のジャネットに追いついたとしても、それはそれで良いわけ。日本人向けだから、周回遅れでも構わないと。ちゃんと最初から言い訳しちゃってるのね。だいいち日本人ではたぶん、このくらいのポップさを残しておかないと、万人受けしないしね。あとは、この路線でハラを据えて、「日本人だからこそ」の部分を前面に出して、それこそQueen of Hip-popを目指して欲しいな、と思う。それが自称「反米」主義者である私の言い分(笑)。この『PLAY』はアムロちゃん本人のプロデュースなんだけど、ちゃんとその辺をぜんぶ計算の上でプロデュースしているというのがわかるのね。アムロちゃん、いいわあ。
 ・・・セイコたんも見習ってほしいな、という感じなのです。←結局これが言いたかったのかも?

PLAY(DVD付)

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