癒しのシンガー・EPOについて

 今から15年前、職場が変わって、どうもその職場と馴染めなくて辛い時期があった。同時期に実家を出てひとり暮らしを始めたので、お金もないし、友達も居ないしで、寂しい毎日を過ごしていた。特に寂しさが募るのは週末で、お金がないからどこにも行けないので、よく近くの土手へ散歩に行って気を紛らせてた。
 そんな頃、よく聴いたのがEPO。俺にとって慰め、癒しの音楽。それがEPO。
 同時期に俺、精神世界とかチャネリングとかに興味があって、その類の本を良く読んでいたのね。自分の中の無意識のある部分が、宇宙の大いなる存在と繋がっていて、そのメッセージにしっかりと耳を傾けなさい、とかいうやつね。それは現状に拘泥していてはダメよ、というメッセージでもあって、現実に打ちのめされていた当時の俺としては、それが「救い」だったのね。それで、少しでも自然のメッセージを感じたくなって、結局行った場所が「土手」!っていうのがね。なんかあの頃の自分がカワイイ(笑)
 EPOに傾倒したきっかけは確かテレビ番組の「ミステリーゾーン」とかいう番組のエンディングテーマで彼女の曲「百年の孤独」が使われたことだったように記憶している。その番組の内容は良く覚えていないけど、確かイルカのもつ癒し効果とか、人間の涙の成分の不思議とか、とにかくそんなちょっと精神世界寄りの不思議なハナシを取り上げる情報番組だったと思う。そのエンディングロールに流れた「百年の孤独」のこんなフレーズに俺はビビッときたのね。

 遺跡を見ると胸が騒ぐ 私はどこに戻ろうとしてるの
 Nobody Knows it my histories
 目覚めたたましいの静かなひとりごと
 
 Wow wow いつの日か年をとって 
 みんなにさようなら言う時が来て
 ほんとうの「ありがとう」を言える気持ちはどんなだろう? 
 (words epo) 

 これを聴いて「うわあ、俺の魂も目覚めてるよ!」となっっちゃったわけ(笑)。この頃のEPOのアルバム『wica』も、もろこの世界を追求したような内容で、疲れた俺の心を優しく包み込んでくれた上に、大いなるメッセージをたくさん運んでくれたものだ。
 さて、そんなEPOが最近、俺のなかでちょっとしたリバイバル。(また少し、心が疲れているのかも。)EPOの音楽に再会して、改めて感じたのはその声の心地よさだ。EPOに対する一般的な印象といえば「DOWN TOWN」や「う・ふ・ふ・ふ」といった元気なポップソングのイメージが強いと思うのだが、少なくとも90年代以降のEPOは一貫して「聴いて心地良い音楽」を目指してきた人らしい。近年のEPOのその声には、妙な自意識とかトゲが不思議なくらいなくて、楽器のようななめらかさと、さりげない優しさ・温かさが溢れている。
 ヴァージン・レコードとの契約作品で彼女のターニング・ポイントになった91年の『FIRE&SNOW』(「星になれなかった涙」「赤い川」は名曲!)、上述の92年作『wica』、93年の『Voice of ooparts』、以上3部作は疲れた心を神秘なエネルギーに満ちた宇宙へと開放してくれる素晴らしい作品群で、俺の宝物だ。ただ今は入手困難なので、初心者にはそんなオンリー・ワンのシンガー・ソングライターEPOの魅力をコンパクトに詰めたベスト盤として『TRAVESSIA』をオススメ。
 最近の彼女は音楽活動以外にも「声」を使った胎教や催眠療法などセラピーの世界でも活躍しているようで、俺がかねてから感じていた彼女の音楽の中にある「癒し」は、いよいよ本物として動き出した、ということね。何だか嬉しい。

TRAVESSIA

TRAVESSIA