「お役所」のやりきれなさ

 仕事上、いわゆる「お役人」との付き合いが多い。かなり前のエントリーで、経験から感じたお役所の文化というか、組織風土に潜む弊害について書いたことがある。
 最近の道路特定財源に関する政府与党サイドのあまりにも硬直的な対応を見て、あのエントリーを思い出した。諸悪の根源は利権に群がる政治家たちには違いないが、それを無自覚なままに強く後押ししているのは、多くの官僚たちであり、多くの善良なお役人たちに間違いないということ。
 元凶は、お役所独特の「文化」であり、それは構造的な問題なのである。
 お役人は、無責任だ。いや、一人ひとりを見ていけば彼らのほとんどは真面目に責任感を持って仕事に取り組んでいるように見えるし、実際に「公僕」として堅実な仕事をしている人ばかりだ。しかし、彼らは以下の点で、お役人という立場で仕事をする以上、結果として無責任にならざるを得ないのだ。
1.人事の回転の速さ。
 短いスパンで部署を移されるから、実績を残すよりまず失敗をしないことが最優先される。つまりは「前例重視の事なかれ主義」にならざるを得ない。
2.予算取りに命を賭ける。
 お役所で予算が配分される時の最大の指標・根拠は、実績だ。つまり、予算を取るために無理やりに実績を作る。期末に集中する道路工事しかり、無駄な出張しかり。
3.書類至上主義。
 美辞麗句で固められた書類にお偉方のハンコが付けば、それは伝家の宝刀。担当が変わっても情勢が変わっても、誰も疑問を持たずに書類の美辞麗句だけが、一人歩きしていくのだ。
 さて、おさらい。つまり、ここでいうガチッと硬直した「予算」が特定財源というわけね。遣い方がどんなに滅茶苦茶でも、いちおう遣った実績はあるから、多分どこのお役所でもそれは来年度予算としてすでに計上されているのでしょう。それを意味の無い予算だから削りましょう、なんていうお役人は、まずいませんって。「この予算はず〜と前からそういう風に計上されているんですから、まだ担当になったばかりのワタクシはそれに倣っただけです」てなわけで。
 そして、建設予定の高速道路の経済効果は●●億円、という10年前の書類を見れば、現区長(当時は土木課長)の印鑑が押されていたりして。お役人で文句が言える人は誰ひとりいないわけで。

 そんなわけで今日も、真面目な、善男善女のお役人たちによって、無自覚なまま、無責任行政は続いていくのだ。
 あ〜、やりきれない。

PS.タレント弁護士の橋下さんが、大阪府知事になられたようで。去年のイシハラ知事再選といい、ホントまったく、都民も府民も、懲りない人たちが多いのね。