April Foolに垣間見た真実?

 今年のエイプリルフールの日はそれこそ「嘘じゃないの?」というくらいの強風が吹き荒れた。近年、風の強い日が増えた気がするな、と思うのだけど、これも地球温暖化と関係してるのかしらね。それはさておき…。
 その日俺は強風の中外回りの仕事があってJRの駅で電車待ちをしていたのね。強風の影響で運行ダイヤは大幅に乱れていて、電車がなかなか来なかった。それなのに、どのくらいの遅れなのか、駅のアナウンスも全然無くて、俺は少しイライラしてたのね。
 ホント、最近はJRに限らずどこの駅もめっきり駅員が少なくなって、結果、鉄道会社はどんどん不親切になってきたような気がする。運行状況を知るにも自分からわざわざ電光掲示板を見に行かない限り何も教えてくれなかったりするのよね。民営化って、結局はそういうことなのよ。何もかも効率優先。ム・カ・ツ・ク!
 それはさておき…。そんなわけで俺は強風の中、イライラを募らせながら、15分以上も、いつ来るかもわからない電車を待っていたわけなのだが、やっと電車接近のジングルが鳴って少しホッとした瞬間、これまでにないほど、モノ凄い突風が吹いたのだ。びゅ〜〜〜ん!!!
 そのとき、ホームで電車待ちの人々が騒然とした。何かと思って見ると、なんと、どこからか大きな看板が飛んできて、プラットホーム内の線路の上にフワリと舞い落ちたのだ。
 そこへ、接近する電車。あぶない!何とか運転士に知らせようと合図を送る人もいたが、電車はあっという間に看板の落ちた線路の上へ。「ガッ・タ・ン」とスゴイ音を立てて看板を踏み潰した電車は微妙な位置で止まった。止まったけれどドアは開かず、閉じ込められた乗客はキョトンとしている。ホームで待つ人々も、これからどうなるのか、駅員はいつ来るのか様子見でキョロキョロしている。
 一向にアナウンスは何も無い。そんな膠着状態が2分。3分。
 俺、仕事中でもあるし電車はあきらめてバスに切り替えようと思って改札へ引き返すことにした。でも途中でふと思い立って駅長室のドアの横にある呼び出しボタンを押してみることにしたのだ。
 呼び出しマイクに向かって「電車が止まってますよ」と俺。
 中から「ええ、異常音を感知しましたので止まっています。」という声。やっぱ、知ってるんじゃん。
 「風で飛ばされた看板が線路に落ちて、それを電車が踏んだんですよ」と俺。
 すると、駅長室のドアがバタンと開いて、駅長(らしい人)が「どのあたりですか?」と俺に尋ねるとあわてて現場へ走り去っていったのだ。
 この一連の出来事、俺も当事者なのだけど、何だかおかしいな〜と思った。

  1. 看板が落ちてきたとき、もしかすると脱線→大事故の危険性もあったのに、緊急停止ボタンを押すこともなくボーっと見ていた俺たちとか。
  2. 電車が止まったあとも、そのうち駅員が何とかするだろう、とホームにボーっと突っ立っていたままの俺たちとか。
  3. 異常音を聞いて電車が止まったことがわかっていても現場に急行しない駅長(らしい人)とか。
  4. お客に対して何のアナウンスもしない、駅員たちとか。乗務員がすぐに降りてきて現場を確認しないこととか。

 多分このうち3.4は、削減された少ない人員の中で連絡調整するのに手間が取られて、関係者が持ち場を離れられなかった、ということなのだろうけどね。それにしても、自分を含めて、「傍観者」がとっても多かったってこと、そこに何かゾ〜とするものを感じたのだ。「きっと誰かが動いてくれるだろう」あるいは「面倒なことにかかわりたくない」そんな感じ?俺たちが漠然と期待している「動いてくれるはずの誰か」は、効率化の名の下、削減された最小限の人数で、もはやマニュアル通りに動くだけのロボットなのにね。
 しっかりと危険を予知して、情報を集めて、自分の身は自分で守らなければならない世の中になったのかもしれないけれど、肝心の俺たちは、まだ平和で大人しくて甘えん坊な、かつての日本人のままなんだろうね、きっと。
 そんなことを思わされたエイプリル・フール