『アイデンティティー』My Little Lover

 聖子さんのレビューついでに、もうひと組のマイフェイバリットアーティスト、マイラバも新作を出したのでちょっとだけ書かせてもらいます。こちらも軽〜く。
 前作『AKKO』は文字通りソロになったAKKOのマイラバへの思いの集大成のような力作だったけど、新作『アイデンティティー』は、そこからさらに進化(深化)した作品になっている。
 本作から小林武史氏が製作メンバーにカムバック、それを「やっぱりAKKOに未練あるんじゃん」とゴシップ的に見るか、「マイラバでやりたいことがまだあるのかな」と歓迎してみるか、そこで大きな違いがあると思うが、俺の場合、やっぱり後者。はっきり言って、そうして聴かないとこの作品の良さが分からないかも。
 俺の場合、マイラバにおける小林武史のアレンジ手法、ギター&ドラムン・ベースが単調なリズムを刻みながらも、結局AKKOのこれまた単調なボーカルを逆に引っ張っちゃうような、シンプル・イズ・ベストの王道を行くアレンジが大好きだったのだけれど、新作はちょっと90年代初頭に逆戻りしたような無難な(少々古臭いような)JPOP調アレンジが多くて新鮮味はイマイチ。でも逆にAKKOのボーカルが、曲によっては声自体が別物に感じるくらい表現に幅があってとてもGOODなのだ。ひととおり聴くと全体ではスーッと1枚聴き終わっちゃうくらい大人しい作品ではあるのだけど、そんな感じでじっくり聴き込めば聴き込むほどに、自然に1曲1曲の中に仕掛けられたメロディーの美しさや、Akkoが紡ぐ耳に引っかかる言葉の数々に「あ!」というような驚きに出会える、それこそ「スルメ・アーティスト」の真骨頂のような作品なのだ。
 聖子さんの新作と違って、こちらは聴けば聴くだけ「イイ!」が発見できる、違いの分かる大人向け。(なんて言ったらセイコファンは怒るかな。)

アイデンティティー(DVD付)

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