介護業界の人材難に思う

hiroc-fontana2008-07-08

 厚生労働省労働市場速報」によれば、平成20年4月の有効求人倍率は1.64倍だそうです。但し、正社員の求人倍率は0.65倍・・・。酷い状況ですね。
 その中でも介護業界は深刻な人材難で、求人倍率は3倍を超えていると言われています。もちろん業務のハードさが人材難の要因ですが、イチバンの原因は、給料の安さです。
 つまり、仕事が大変なわりに、給料が安い。これでは人は集まりませんよね。直接的に他人の役に立って、うまくいけば「ありがとう」と感謝もされて、人間的にも成長できる仕事なんて、そうは無いのに、勿体ないことです。一方では冷たい自動車工場の現場で使い捨てにされたあげく無差別殺傷事件を起こすような若者がいて、その予備軍さえ大勢いると言われているのに、真に、彼ら若者の力が必要とされる介護職のような分野には、人が集まらない。甘い考えかもしれませんが、私は、秋葉原事件を起こした孤独な彼も、介護分野で頑張ろうという選択肢がもしも彼の中にあったならば、少しはその後の人生も変わっていたのではないか、と思うのです。たとえ給料が安くても、お年寄りから一度でも「ありがとう」と言われる体験をしていたら、なんて。やっぱり甘いかな。
 介護の分野は以前から雇用環境の改善が叫ばれ、「介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律」がようやく施行されましたが、たとえ今後、劇的に雇用環境が改善されるとしても、おそらくは「3K職場の典型」という一般的評価を払拭するには事業者側の相当な努力が必要だと思いますし、長い時間がかかるものと思われます。その意味では、マスコミの責任も少なからずあるでしょう。
 それともう一つ。「ご老人や身体の不自由な人をお世話するのは、家族(特に、オンナ)の役目」。日本にはいまだにそういう固定観念が残っているのでしょうね。人をお世話することの大切さ、大変さは承知していても、それでお金をもらうことについては、お金をもらう当人も、お金を払う当人も、それを見ている第三者も、日本人にはどこか抵抗があるのかもしれません。国の公的な支え合いの仕組みとして介護保険が2000年に導入され、そこから10年近くたったにもかかわらず、介護分野で頑張る人々の社会的地位はいまだに向上していないのは、日本人の意識が変わらずに昔ながらのものを引きずっているからなのかもしれません。
 私は、この状況を打開するには、やっぱり消費税を上げるしかないんじゃないか、と思っています。
 でも、誤解しないでください!

これはいま政府与党が言っているような意味(ムダ遣いを棚に上げて、足りない足りないの大合唱!)の消費税アップではありません。
 アップした税金によって、老齢年金・障害者年金を大幅に増額させるのです。それによって、福祉サービス利用の中心である年金生活者の可処分所得を増やし、(介護業界に)お金を落としてもらうのです。厚い所得保障をした上での高負担です。これは北欧では常識で、お金を払う側は消費者としてのプライドを持って高くてもより良いサービスを選んで相当のお金を払いますし、お金を頂く側はそれ相当の報酬を受ける分、プロのプライドを持って質の高いサービスを提供しようと努力するわけです。介護される側は豊かになってプライドを回復すると同時に、介護する側の地位も仕事の質も向上する。つまりは、すべてをワンランクアップさせる仕組みづくりです。
 ですが、いま日本の政府がしているのはその逆です。彼らは緊縮財政しか考えていませんから年金支給額は下げる。すると少ない年金では福祉サービスの自己負担額さえ払えない人が多くなるから、負担額を下げたり減免したりして何とか制度を維持しようとする。すると、結局はめぐり巡って財政支出が増える。その悪循環です。介護保険制度も障害者自立支援法も同じようなものです。そのスパイラルの中で、事業者は年々介護給付がカットされた結果、人件費の削減が余儀なくされ、介護分野の労働環境は悪化の一途を辿ってきたわけです。
 思い切った財政支出、それも法人税減税のような経済政策だけではなくて、年金増額をはじめ国民一般に行き渡るような財政支出をして、まず大きくお金を循環させること。その上で抜本的な税制改革をする。それが日本には必要なのではないかと思います。(財源は・・・それこそ、埋蔵金の出番だと思います!)
 今後、この国の介護・福祉業界がどのくらい成長していくかは、そのバロメータになるかもしれませんね(見通しは暗いですけどね。。。)。