窮屈な快感・・。

 今朝は通勤電車で座れてラッキーだったのだけど、しばらくしたら隣に座った人(♂)が爆睡モードに入ってしまって、寄りかかられてきて困った。俺は、前に自分が爆睡してしまったときに、隣の若い女に強烈なヒジ鉄を食らって、滅茶苦茶、不快な思いをしたことがあったから、寄りかかられた重さが耐え切れないほどでない限りは、決してあの女のようにヒジ鉄で相手を叩き起こすようなことはせず、そのまま寄りかからせてしまうことが多い。今日はたまたま爆睡していた人がタイプだったこともあって(笑)、ちょっと重たかったのだけど、体重を預けられてもじーっと目を瞑って我慢していた俺。
 俺はロングシートの端っこに座っていたから、電車がブレーキを踏むたび隣の人の身体が無造作に俺の方に倒れかかってきて、結果的に俺の身体はギューっと座席の「仕切り」に押し付けられてしまう。そうして身体が押し付けられるたび、そのキュウクツさに「うう」と思わず声が漏れそうだった。
 しかしそれを繰り返すうち、最初は不快に思っていたのが、次第にそれが不思議な感覚に変わってきたのに気づいた。
 身体がギュー、と圧迫されるたびに、懐かしいような、ほっとするような、ポワーンとした何とも言えないイイ気持ちになってきたのだ。
 それはまるで・・・
 数年前、恋人と初めてキスをしたあと、時間も言葉も忘れたまま、日付けが変わるまで、ただただ抱きしめ合っていたあのときのような。
 昔、修学旅行で泊まった旅館で、ふざけて布団の上から数人の友達に乗っかられて、苦しくて身動きできないけれど何だか嬉しくてたまらなかった、あのときのような。
 そして、はっきりと覚えてはいないけれど、乳飲み子の頃、母にやさしく抱かれていた、あのときのような。


 そういえば、抱きしめる・抱きしめられる、そんな行為、ここのところとんとご無沙汰で。
 眠っている無防備な他人の悪意のない身体の密着に、思わず「人のぬくもりのあたたかさ」なんぞを感じちゃった俺だったのである。中年独身の侘しさを、ひしひしと感じる今日このごろ。