フレキシキュリティ

 NHKで放送された「セーフティネット・クライシス」は第二日目しか観られませんでしたが、なかなか良い番組でした。湯浅誠さんの言葉がとても説得力があって、経営者代表や政治家(なんとあの大村氏!)がいくら自己弁護めいた発言を繰り返しても、冷静かつ穏やかに正論を説き続けるその姿には感銘すら受けました。
 番組で印象に残ったのは「譲りあい」という言葉。番組では、非正規雇用に関しては柔軟な雇用形態のひとつとして温存しながらも、それによって生まれるセーフティネットからの脱落者を救う政策に取り組んでいる先進例として、オランダの例を挙げていました。それは、企業や政府の持ち出しで失業給付などのセーフティネットを手厚くすると同時に、それを職業能力開発とセットにすることで労働力の質と流動性を同時に高めようというもので、「フレキシキュリティ(柔軟性+安心)」という造語で語られます。これは「非正規を活用して人件費を抑えたい」企業側と「失業後の補償・チャンスが欲しい」労働者側の、一種の「譲り合い」です。また、国民全体で見れば、こうした社会保障政策により一定の税負担を受け入れざるを得なくなるのですが、ここにもお互い困った時には助け合う「譲り合い」の精神が貫かれているように思います。
 日本も、狭い国土にたくさんの人がひしめいているわけですから、もっとお互いに「譲り合い」の精神でやっていけないものかと思うのですが、政界や財界のトップ達からして「カネの亡者」にしか見えない昨今ですから、一般市民に「もっと譲り合え」なんて言っても「なんで俺たち(ワタシたち)だけが我慢しなくちゃいけない?」といわれても仕方ないような気がします。何だか、悲しいですけどね。