あなただけ見つめてる・・・

 最近の首都圏のJR通勤電車はドアの上に液晶パネルがついていて、ニュースだの占いだの天気予報だのマンガだの、いろいろな番組が流されていて楽しめる。20年前くらいのハリウッド映画「トータル・リコール」で、火星を走る列車の車中に同じような液晶パネルが搭載されていて「火星にようこそ!」みたいなCMが流されているシーンがあって、当時は「これはすごいアイデアだな」と感心した覚えがあるのだけど、今それがナニゲにリアルに実現しちゃってるわけよね。そう考えるとちょっと不思議な感じ。
 そんな車内番組の中で、俺はマンガの「ダーリンは外国人」(by小栗左多里)っていうのが結構好きなのね。作者の独特な視点が小気味良くて、まるで脇の下をコチョコチョくすぐられているような感じで。でもその底辺にホンワカとした人類愛・夫婦愛も感じられたりして、イイのよね。
 そんなわけで、退屈な通勤電車の車中で、液晶パネルに映し出される番組を見るのが俺の密かな楽しみだったりするわけ。
 でもね、この液晶画面、楽しい分、時としてイライラのタネになったりもするのだ。
 たとえば、見ているマンガが丁度オチを迎える場面で駅に着いてしまい、降りなくちゃいけないとか。
 混んだ電車で座れてホッとしたのはいいけど、自分の前に立っている人が邪魔で画面が見えなかったりとか。
 もっとイヤなのは、自分が座っている場所から画面は見えるんだけど、俺が画面を見ている視線のすぐヨコに、立っている誰かの顔があったりすると、なんだか自分がその人の顔をまじまじと見つめているような妙な錯覚が生じてしまうのよね。向こうも視線を微妙に意識しているような素振りを見せたりして、それがイヤだし、こっちは「あなたの顔を見つめてるわけじゃないんだよ」とわざと顔を横にずらして画面を凝視する振りをしたりするんだけど、そんなやり取りが何だかとても面倒くさいのよね。
 たとえば、病院の待合室にテレビがあって、その画面のすぐ横に、こっち向きに人が立っていたとしたら、すごく気になるでしょ?そんな感じなのよね。
 もちろん・・・立っている人がものすごいタイプだったら、テレビ見るフリしてその人の顔をガン見しちゃうだろうけど、やっぱり・・・(苦笑)