オザワ氏辞任コールに同調するまえに

 西松建設からオザワ氏への違法献金疑惑について、オザワ氏の代表続投宣言のあと、民主党内からも次々と代表への辞任要求が出てきたほか、共同通信世論調査では「辞めるべき」が7割近い、などと報道されていますけれど、私はやっぱりどこか腑に落ちません。
 私には、オザワ氏秘書が起訴された内容が、パチンコで景品を交換所に持って行って現金に交換した人を捕まえて「お前は現金賭博だと認識してパチンコをやっていたのだろう?」とナンクセつけているのと同じように思えるのです。「そう思っていたのなら、それは現金賭博だ。おまえをタイホする!」というような。
 ふつう、誰もがパチンコは実質的には現金賭博だとわかっているけれど、交換所に特殊景品を持ち込んで現金に交換していれば、形式上、違法ではないから、そうしているのだと思うのですよね。
 けれども今回、検察は、オザワ氏の秘書が「違法性を認識していたはずだ」という、それだけの理由で、逮捕に及びました。それも、手に入れた金額が多いから、というだけでオザワ氏周辺だけをターゲットにしたのです。景品交換所に並んでいた議員は他にも(特に自民党のなかに)大勢いるのに、彼らは金額が小さいからお咎めなしのようです。おかしいですよね。
 だからオザワ氏は逆ギレして「いっそ企業献金を一切禁止したらどうだ」などと口にしましたが、そんなことをしたら自民党議員をはじめ多くの議員が政治活動を大きく制限されてしまうことになりますから、自民党からは大慌てで大ブーイングの嵐が巻き起こりました。あたり前のハナシですよね。
 オザワ氏に辞任を求める声の多くは「彼が多額の献金を受けていること」そのものに対する怒りであるように思います。それは古い自民党の体質そのものである、いわゆる「金権政治」に対する怒りです。それが大きくクローズアップされて世間を騒がせた以上、疑惑のオザワ氏は潔く退くべきである、という主張です。(それと、このネガティブ・キャンペーンの打撃によって選挙戦が不利になるからという、議員たちの手前勝手な思惑も目に付きますが。)
 しかし私は、これは少し的外れな意見のように思えます。
 西松から実質的に多額の献金を受けていたとしても、それをオザワ氏がどう使ったのか。その「使い方」に問題があれば(いままで事務所費が問題になった自民党議員に対し、民主党は再三辞職を求めてきたわけですから)、オザワ氏は辞任すべきだと私も思いますが、今回の騒動で問題になっているのは「献金を受けたこと」だけなのですから、この段階でオザワ氏が責任をとって辞職する必要は全く無いと思うのです。
 実際、カネの「使い方」にしても、与党ではなく、あくまでも野党の代表である彼が公共工事を通じて国民の多額な血税を西松に横流しできるか、というと、それは難しいのではないでしょうか。胆沢ダムの受注に関してオザワ氏側が西松に便宜を図った、という一部報道はありますが、それについても今は「クロ」ではなくあくまでも「灰色」のままなのです。つまり、今の時点ではオザワ氏が我々国民に重大な背信行為を犯した、ということは何ら証明されていないわけですから(あくまでも「今の時点では」ですけど)、少なくとも私はマスコミと一緒になってオザワ氏に辞めろと言う気は、全く起こらないのです。
 それに、もし今オザワ氏が辞任してしまったら、それこそ疑惑を認めたものと捉えられかねませんし、二階氏をはじめ同じ疑惑を持たれている自民党議員が「我関せず」でいるにも関わらず、彼だけが「辞任」してしまっては、自民党の思うツボ、です。民主党代表としては、それはどうしても出来ないはずですし、そうさせてもいけないはずなのです。
 ですから、民主党議員は、本当に政権交代を目指すのなら、マスコミのネガティブキャンペーンに煽られたりせずに、この件に対してもっと冷静に対処すべきであるし、オザワ代表の辞任は(今は)必要ないことをしっかりとアピールすべきだと思います。
 そもそも、かねてから「豪腕」と呼ばれてきたオザワ氏のイメージはもともとクリーンとは言い難かったですし、マスコミからも叩かれ続けてきたのですから、それを承知の上でその人をいままで代表として支持してきたことを、いま彼を批判している民主党議員は、まず振り返るべきではないでしょうか。
 そして、政権交代が目前に迫ったこの時期に突然、まるでオザワ氏のダーティー・イメージを敢えて増幅させることだけを狙ったような検察の意図的とも思われる動きに対して、納得のいく説明を徹底して求めていくべきではないかと思います。