2009政権交代で学ぶべきこと

hiroc-fontana2009-12-30

 2009年の最も大きな出来事といえば、やはり「政権交代」でしょう。64年ぶりに、国民の投票によって成し遂げられた、初の政権交代です。
 果たしてこの歴史的な政治の転換は、私たち日本国民にとって吉と出たのか凶と出たのか。それは今の段階で判断を下すにはまだ時期尚早のように思うのですが、年末のこの時期、1年のニュースの総決算にかこつけて、マスコミは既に鳩山政権に対して一斉にバッシングともいうべき批判を繰り広げているのが現状です。ぶれる鳩山首相、3党連立の混乱、一向に成果の上がらない政策、脱官僚の失敗、そして支持率の急降下、国民の政治不信・・・。
 思い起こせば、私自身、このブログを書き始めた当初から、当時の与党・コイズミ自民党政権の横暴に対して憤りを感じて、慣れない政治批判の記事を書き連ねてきたりしたわけですから、政権与党に対して批判(正しく言えば「監視」ですね)をする姿勢については“当然のこと”として受け入れなければなりませんし、先の衆院選で圧倒的多数で勝利した民主党については特に、自民党が陥ったような“数の横暴”に走らないように厳しい監視の目を向けていくのも当然の事と理解しています。
 そうはわかっていても、私はどうも、この国のマスコミは、ちょっと与党・民主党に対しての報道がマイナスの方向に偏っている気がしてなりません。例えば、鳩山首相献金偽装問題にしても、中国副主席が来日した時の宮内庁の騒ぎにしても、闇将軍・オザワ氏がいよいよ動き出した、みたいなハナシにしても、全部どこか“悪意”に満ちていて、次の参院選では何とか民主党を敗北させようという使命を帯びて、こうした報道を繰り返しているのではないか、というような疑念が消えないのです。
 ただ、先の衆院選前の段階でのマスコミ報道も、「民主党マニフェストはバラマキだ・財源の裏づけがない」という批判が大勢を占めていた一方で、自民党が選挙前にばら撒いた「定額給付金」(そういえば、これも今年の出来事だったんですよね!)に関しての麻生(アホー)元首相の“発言のブレ”についての批判報道などもきっちりしていたわけですから、ある意味「イーヴン」だった部分もあるのでしょう。
 それが、野党に転落した自民党の存在感があまりに薄れてしまった現在、繰り返されるのは与党・鳩山連立政権に対する批判ばかりで、私にはそれは少し行き過ぎている気がして、昨今のテレビや新聞・雑誌は見る(読む)に堪えないのです。連立政権を貶めて次の参院選での勝利を無いものにして、では次は日本をいったい誰に委ねればいいのか。そういった方向性も示さず、ただ現与党の批判報道を繰り返しているこの国のマスコミは、やはりどこかおかしい。はたまた、デフレだ、大不況だ、声高に叫び、我々の将来への不安を煽るばかりで、それをあたかも政権交代後まだ100日しか経っていない新政権の責任のように報道するこの国のマスコミは、やはりおかしい。
 今回の政権交代は、そういったマスコミの“おかしさ”を我々に気付かせてくれたような気がします。特に、先の衆院選民主党を応援した国民にとっては、衆院選前はマスコミと一緒に与党を「批判する側」だったのに対して、衆院選の後では一転、与党を応援すればするほど、マスコミから「批判される側」に立ったわけですね。応援した政党や政治家が、マスコミ報道によって時として理不尽なバッシングをされる、という立場を味わったわけです。これは極端に言えば、熱烈なネットウヨたちが衆院選前に、安倍くんやアホーに対するマスコミの批判的報道に反論して「彼らこそは本物の政治家だ」と色々な政治サイトに虚しい書き込みを続けていたのと同じ状況と言えるのかもしれませんね。
 つまりは、マスコミ報道というものは、常に無責任に政権を批判するだけなのだ、ということ。批判する側と批判される側の両方に立ったことでその理不尽さを学べたわけですから、これから我々はなるべくならマスコミに踊らされず、冷静に現状を分析し、正しい情報を得ないといけない、ということ。それを、今回の政権交代によって我々は学ばなければいけないのだと思います。
 幸い、先日、テレビのニュースショウで「鳩山政権に点数をつけるなら?」という街頭インタビューの結果を放送していたのですが、意外に70点前後の高得点をつけた人が多い印象で、支持率急降下を大々的にアピールしたかったテレビ局サイドはその結果に少し戸惑っていたようでした。回答した人の多くは「まだ政権交代したばかりだから見守りたい」というような回答をしていて、自分と同じスタンスの人が意外に多いのかもしれない、と思うと何だか嬉しい気分でした。一方で落第点をつけていた人は「鳩山はブレるからダメ」とか「親から沢山小遣いをもらって庶民の気持ちなんてわかるはず無い」とかいう、マスコミ報道を鵜呑みにした個人攻撃のコメントばかりで、そういう(マスコミに踊らされる)人たちも少なくなくて、やれやれ、といった感じでした。
 もうひとつ、今回の政権交代で我々が学ぶべきことは、政権が変わっても、政治は一朝一夕には変わらないのだ、問題解決には時間がかかるのだ、ということです。「コンクリートから人へ」をスローガンに颯爽と動き出した新政権でしたが、八ツ場ダムにしても普天間にしても、地域住民に配慮すればするほどに、問題がこじれていく印象があります。また、ムダの徹底排除で財源を確保すると謳った予算編成にしても、事業仕分けなど新しい動きは見えましたが、結局は大幅な財源不足に陥ることがわかりました。でも、だからといって、「誰に任せてもこの国はダメだ、変わらない」と悲観的になってはいけないと思います。それらはすべてが半世紀つづいた55年体制の“負の遺産”です。例えば八ツ場ダム。公共工事によって地方にカネが流れ、そして雇用がもたらされる。ただ地方はそれらにすがるしか生き延びる道がない、というこの国の歪んだ構造は、これまで長い年月をかけて自民党による土建政治によって培われてきた負の遺産そのものです。狭い国土、人口の増加もないわけですから、これはいずれにしても正していかなくてはならない課題なのです。
 政権交代をきっかけに、そういった難しい課題が次々に明らかになって、我々が自分たちのこととして考え、世論を形づくっていけること。それらの問題解決にはとても時間がかかると思いますが、少なくともそれは明らかな前進であり、喜ばしいことだと思うのです。
 2009年に起こった政権交代は、日本人にとって必要不可欠なことであり、歴史的な事件だったと、後世語ることが出来るよう、私たちはこれを正しく評価し、もっと前向きに受け入れ、新政権を見守っていく姿勢が肝腎だと、私はいま思っています。