DVD『ザ・ベストテン 山口百恵』

 これは、価値あるBOX。
 昭和を代表する歌姫、山口百恵さんが活躍した70年代後半といえば、テレビの歌謡曲番組全盛期。「夜のヒットスタジオ」を筆頭に、「紅白歌のベストテン」、「ベスト30歌謡曲」や「ミュージック・フェア」などが日替わりのように放送されていたし、百恵さんを生んだ伝説のオーディション番組「スター誕生」や音楽クイズ番組「クイズ・ドレミファドン」、ドリフの「8時だよ!全員集合」のようなバラエティ番組でも必ずのように歌のコーナーがあってキラ星のごとくヒット歌手が登場していたのよね。その中でも78年に満を持して登場した感もあったTBSの「ザ・ベストテン」は、まさしく歌番組の本命、というカンジでした。
 なにせ、毎週、最もヒットしている10曲を本人出演で紹介していく、それも生放送というのだから、今から考えると凄かったわよね。まあ、地方公演やら“テレビ出演拒否”やらで結果的には10人全員がスタジオに一同に会すことはほとんど無かったにしても、やっぱりその時その時の最も旬な10人がライブで見られる、ということでは画期的な番組だった。司会の黒柳さんと久米さんの軽妙なやりとりもホント楽しかったしね。歌謡曲好きの少年(?)だった俺も、本当に毎週木曜の夜が楽しみで、9時前になると何だかソワソワしちゃったりね。実際に視聴率も高くて、確か30%越えてた時期もあったような気がする。
 さて、そんな時代に活躍した山口百恵さんにとって、次々と復刻されたCD音源はもちろん、主演映画やドラマ、あるいはマイクを舞台に置いて去っていった伝説の『さよなら公演』の映像などはいつでも手の届くGOODSとしていまだに音楽ショップの店頭に並んでいるわけだけど、やっぱり彼女が活躍した中心の場というと“テレビの歌番組”だったわけで、それを抜きに伝説のスター・山口百恵は語れない、と思うわけ。
 その意味で、このDVD-BOXは本当に貴重だな、と思うのだ。

ザ・ベストテン 山口百恵 完全保存版 DVD BOX

ザ・ベストテン 山口百恵 完全保存版 DVD BOX

 当初このDVDが発売されるニュースをリンクしているサイト「ナツメロ茶店」さんで知ったとき、俺は“スゴーイ!”と感激しつつも、一方でこのDVDが「ザ・ベストテン」全出演回の歌唱映像を収録している、ということで「そんなに同じ曲ばかり歌う映像を繰り返し見せられてもな・・・」という不安を覚えたのもたしか。でも、実際に入手して視聴してみて、その不安はすぐに吹っ飛んだ。
 まさに山口百恵が歌っている姿は毎回の“3分間のドラマ”。それは1回1回の真剣勝負なのね。例えば平成に入って間もなくの頃、引退寸前のちあきなおみが数少ないテレビ出演で見せた、その全くハズレのない完成度の高いパフォーマンスはホントにスゴイ、と思うのだけど(動画サイトに多数アップされているのでご覧あれ)、山口百恵もまた、引退のカウントダウンの中で(というよりそれ以前から)毎回、とてつもない集中力を見せていて、たとえ同じ曲を歌っていても毎回引き込まれてしまう魅力がある。これはスゴイこと。
 視線の動き、歌う表情、手振り、キメポーズ、それは総て美しく緻密に計算されつくしている。それに時として、生番組ゆえの百恵さんの一瞬のひらめきが加わって、さらに魅力的なものに変化していく。だから見ていて飽きないのね。
 ショートヘアに白いドレスで歌う「乙女座宮」や「しなやかに歌って」では、まるでかつてのセイコのように、ティーンアイドルとしての清楚な魅力をふりまく百恵さん。「いい日旅立ち」「愛染橋」では、歌謡曲歌手として圧倒的な歌唱力でウタを聴かせてくれる百恵さん。「プレイバックPart2」「絶対絶命」「謝肉祭」などでは、主人公になりきって振り付けもバッチリ、短いドラマを魅せてくれる百恵さん。そして「ロックンロール・ウィドウ」ではロックンローラーとして・・・。いつでも、どこでも、何であってもサマになる百恵さん。見ていて飽きないのよね。
 それでいて、ウタの合間のトークでは10代の少女そのままの屈託のない笑顔を見せたり。映画「ホワイト・ラブ」の撮影と重なっていた「愛の嵐」の頃から、特にその笑顔は輝きを増して(たぶん、その頃にアノ人と結ばれたのでしょう・・・)続く「しなやかに歌って」の頃に交際宣言。「しなやかに歌って」を歌う彼女は本当に幸せそうで、そんな百恵さんの人生の軌跡がこの映像にもちゃんと記録されていて、そのあたりも感慨ひとしお。
 それにしても百恵さん、78年前半の出演回はほとんどドラマ「赤い絆」の撮影後にスタジオ入りしていたり、2月「乙女座宮」の回で4ヶ月ぶりのオフで欠席したあと「次の休みは夏か秋くらいかな」なんてボソッと答えたり、そんなハードスケジュールの中で毎回の出演をこなし、それも完成度の高いパフォーマンスを続けていたのだから、かのピンク・レディーも真っ青(笑)、この人の尋常でないプロ根性には思わず両手を合わせたくなる(笑)俺なのだ。ホント、これだけやったんだから、もう、いいよね、百恵さん。そんな感じ。
 あとは、引退に向かうカウントダウンや最後の出演となった「さよならの向こう側」の回では思わず涙ウルウルです。
 特典映像は「トップスターショー〜歌ある限り」(←そういえばあったわ、こんな番組!)でのパフォーマンスで、まさしくトップスターとして地位を固めた頃の百恵さんの代表曲を収録。映像が鮮明でないのが残念だけど、こちらも楽しめます。司会の二谷英明とのトークでは、十代とは思えない百恵さんの話し手としての頭の回転の速さ、堂々たる受け答えに舌を巻く。人間としても偉大、だったのよねきっと。
 そうそう、手の込んだセットやカメラワーク、生のバックバンドによる演奏など、当時の音楽番組ならではの贅沢さも楽しめるポイントで、もう一つの特典映像、阿木・宇崎夫妻インタビューも面白いです。付け足しっぽいですけど。

 さて、歌謡アイドルファンとしては、同様のDVD-BOX「セイコ版」「アキナ版」「キョンキョン版」・・・どんどん出してくれたら嬉しいし、出ればきっと売れるような気がするけど、今回のモモエ版は、もともとスタッフがモモエさんの引退記念に贈るために編集したビデオが下敷きになっているというハナシもあるし、何しろモモエさんはドラマ「赤いシリーズ」でTBSに大貢献したからこそ実現した企画のような気もするしで、続編は正直言って期待薄かしら・・・。でも、あきらめたくない!

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