お呼びじゃない

 私の中にいる“オキャマ”のツブヤキ。まずは聞いてあげてくださいまし。
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 ああ、何だか時の流れを感じるわ。
 一時期は回りの人からチヤホヤされることが多かったhiroc-fontanaも、もうすっかり旬が過ぎたみたい。ワタシのモテ期は完全終了(涙)。
 飲み屋に入れば、かつて可愛がってくれたおじ様たちは皆、ニューフェイスの若くてキレイな男子に夢中で、ほとんどお声がかからなくなってしまったワタシ。
 「もう、お呼びじゃないのね・・・。」
 サークルの飲み会では、いつの間にか古株になっていたワタシ。もうすっかり“壁の花”。しまいに、“いつまでも気取ってんじゃないわよ!”みたいに言われて(涙)。
 落ち目のアイドルって、きっとこんな気分なのね。フレッシュな若い子たちに次々追い抜かれて、時代に取り残されていく焦りばかりが募る。時と共にメディアから声がかかる機会も少なくなって、ファンの熱狂も日に日に冷めていく。華々しく脚光を浴びていたあの日はいずこへ・・・みたいなね。
 ふと鏡を見れば、そこに映るのは、前髪が後退して、すっかり肌のツヤを失った、まぎれもない40代半ばの中年男。
 あなたは、誰?そう、これが今のワタシね。
 ああ、人はこうやって自分の理想と現実との折り合いをつけていかなければいけないのよね。。
 なのに、華やかなりしあの日の恍惚が、今も忘れられないワタシ・・・。そして今日も、つかの間の輝きを求めてネオンに溶けていくワタシ・・・無駄な抵抗よ。わかってる。

〜〜 陽炎のような擬似恋愛に浮かれて彷徨うのは、もう止めにしないといけないのよね。
 ほら、よく見ればその足元に、不恰好だけど、たしかなキズナの端っこが、転がってるじゃない?
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 ゲイってのは、結婚して家庭に収まることはないから、へたをすると一生、こんな風にフラフラしてしまうことになる。おまけにゲイはずっとシングルだから、何歳になっても売り手がいればそれなりに買い手も付いて、上手くいけば恋愛が成立してしまう世界。だから、年齢を重ねながら、それに相応しい立ち位置を自分でしっかり決めていかないと、擬似恋愛の迷宮にさまよったまま自分を見失ってしまう恐さがあるのだ。そこには結婚して夫になり、子供が生まれて父になり、やがて孫が出来てお爺さんになる、というような、誰にもわかりやすい節目によって定義される“オトコの一生”というものがあらかじめ用意されてはいないのだ。
 この自分にもし、飛びぬけた才能があったなら、このまま年齢を超えて、自分だけの美意識で作り上げた世界で耽美的に生きていく道もあっただろう。しかし、平凡に生まれ落ちた俺は、そろそろホンキで理想世界と現実世界の“ピント合わせ”に本腰を入れていかないといけないのかもしれない、なんて思っているのだ。
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 さて、自分だけの美意識で作り上げた世界で耽美的に生きる人、というイメージで思い浮かんだのがこの映画。これぞ不朽の名作「サンセット大通り」。トーキーの到来によって忘れ去られた、サイレント映画の大女優を、本人の出自そのままのグロリア・スワンソンが見事に演じきる。「世間から忘れられたという事実を受け入れられず、およそ実現不可能だと思われるカムバックを夢見るスター気取りの中年女優」(ウィキペディアより)をめぐる悲喜劇は「現実を知らないのは本人だけ」という状況だからこそ物哀しく滑稽であり、たとえグロリア・スワンソン演じる女優がどれほど高飛車で身勝手であっても、観るものは彼女に一種のシンパシーを感じずにはおれないのです。若きツバメ役のウィリアム・ホールデンの美男っぷり(!)も見モノ。オススメの1本です。

サンセット大通り スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

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