みんな夢の中〜ハマクラメロディーとのしあわせな再会

 先日、BSハイビジョンで由紀さおりさんの40周年コンサートを観たのだけど、それはそれは素晴らしくて、ホント感動したのね。このブログでも紹介した、昨年発表の40周年記念の名盤『いきる』を引っさげてのコンサートだったのだけど、前半は由紀さんの女優としての才能を遺憾なく発揮してのミュージカル仕立てで、演出を担当した高泉淳子さんとの二人芝居をからめながら進行。そして後半はこれでもか!という感じのヒットメドレーで、とても贅沢な内容でしたわ。あ〜、生コンサート観に行きたかった。。。
 由紀さん、コンサートではヒットメドレーのほかに勿論『いきる』からピックアップした曲や、「安田章子」時代の童謡なんかも披露してくれたのだけど、数曲だけ(唐突な感じで)カバー曲を歌ってくれて、その中で俺が特に感動した1曲があった。
 それが、昭和歌謡曲の巨匠、ハマクラこと浜口庫之助さんの作品で1969年に高田恭子さんの歌でヒットした「みんな夢の中」という曲だったのね。
 舞台のシチュエーションは、俄か雨に追われて入った都会のバー。バーカウンターの舞台セットに座って、生ギター1本をバックに歌う由紀さおりさん。

 恋はみじかい 夢のようなものだけど
 女心は 夢をみるのが好きなの
 夢のくちづけ 夢の涙
 喜びも悲しみも みんな夢の中
 (作詞・作曲:浜口庫之助

 演出も文句なしだったけど、何よりもこの叙情的な美しいメロディーを淋しげに、しかし艶やかに歌い上げる由紀さおりさんの、なんと素晴らしかったこと!
 そしてこの歌。「みんな夢の中」。この曲がヒットした頃は俺はまだ5歳。ほとんど知らない歌のはずなのになぜかこのメロディーを覚えていて、知らぬ間に口ずさんでいた。言いようの無い懐かしさと幸福感に満たされながら。

 そしてhiroc-fontanaは一気に、こんな素晴らしい歌を作った作曲家、ハマクラさんの大ファンになってしまったのだ。
 その甘美なメロディーはもちろんのこと、この「みんな夢の中」の詞の全編に溢れる素朴な温かさ、切なさは、これぞ忘れかけた“古き良き日本人の心”そのものといった感じがして、メロディーと共にこんなステキな詞を紡ぎ出せる浜口庫之助という偉大な作家に、今更ながら心を奪われたのだ。
 そして、早速、彼の作品集『歌の巨匠 浜口庫之助作品集〜人生いろいろ』を購入。浜口庫之助作品集~人生いろいろ~超傑作の「愛のさざなみ(おチヨさん)」をはじめ、「愛して愛して愛しちゃったのよ(和田弘とマヒナスターズ)」「星のフラメンコ(西郷輝彦)」「夜霧よ今夜もありがとう(ユージロー)」など、とにかく親しみ易くて上品なメロディーばかりで、名曲のオンパレード。他にも「黄色いさくらんぼ」や「僕は泣いちっち」「有難や節」、「恋の山手線」といった独特のユーモアに溢れた作品も多く、それらもいわゆるウケ狙いのアザトさは皆無で、むしろ愛おしくなるほどの純粋で素朴な明るさに満ちていて思わず幸せな気分にさせられてしまう。そこもハマクラ作品の大きな魅力。
 オドロキだったのは、ハマクラさん本人の歌唱の素晴らしさ。彼のシンガーとしての実力はハマクラファンの間では有名らしいのだけど、このCDにも「バラが咲いた」「花と小父さん」「涙くんさよなら」という有名曲3曲が彼の自作自演で収められていて、バカラックばりのボビー・サマーズ・グループによる小ジャレた演奏をバックに、ハマクラさんの温かくてセクシーな低音で歌われると、これらの聴き慣れた名曲たちにも全く違った訴求力が生まれてくる気がするのがすごい。これは、一聴の価値あり、超オススメです。
 このCDには収められていないけど、他にもスター錦野「空に太陽がある限り」や天地真理さんの「ちいさな恋」、ザ・スパイダース「夕陽が泣いている」など、独特のセンスで印象的なヒットが多いハマクラさん。
 戦後から昭和40年代にかけて、貧しさからようやく脱した人々が、それぞれの夢を膨らませ明日を見つめていたあの頃。浜口庫之助さんはそんな時代にたくさんの名曲を残し、それらの曲たちはいまも、あの頃の夢に満ち溢れたしあわせな空気感をその音の間に封じ込めているような気がする。ヘッドフォンで流すとふと、俺もそんなしあわせな空気に包まれるような気がするのだ。
 みんな夢の中。。。ほんとうに、あの頃って、そうだったのかもね。自作自演集浜口庫之助 CM大全歌えば天国(紙ジャケット仕様)