ナイトメアの魔力「アリス・イン・ワンダーランド」

hiroc-fontana2010-05-18

 いやあ、好きだなあ、この映画。
 俺、もともと悪夢(ナイトメア)系の映画が大好きなのよね。ちょっとシュールなやつ。例えば子供の頃に見たものでは「ブリキの太鼓」とか、サイコーでしたわね。オトナになるのをやめちゃった主人公がブリキの太鼓をたたきながら「キャー〜〜〜!」て奇声を上げると、そこいらじゅうのガラスが割れちゃったりね。ブリキの太鼓 [DVD]あと主人公のお母さんが突然発狂して、サカナの缶詰をグチャグチャ食べた挙げ句に死んでしまったり(汗)。あれはホントーに悪夢を見ているみたいで衝撃でしたワ。
 あとはフェーリーニの「8 1/2」ね。8 1/2 普及版 [DVD]あれも大好き。渋滞の車の中から主人公がフワフワと空を飛んじゃうオープニングから始まって、ホームレス女の“サラギーナ”のクネクネ踊りだとか、最後には登場人物がロケットを囲んで輪になって踊っちゃう、なんていう、高熱でうなされたときに観るような悪夢そのものみたいな映画でした。そのほかにも邦画では「ツィゴイネルワイゼンツィゴイネルワイゼン デラックス版 [DVD]」とかね。覚えているのは何故か、こんにゃくをちぎり続ける大谷直子だけだったりするのだけど(笑)。
 ナイトメア系の映画は、一言で言ってしまえばそんな“キモチワルイ映画たち”ではあるのだけど、一方で特徴的なのは、見方によっては“どこか笑えちゃう”ってとこで、俺がこれらの映画を愛しているのは、そんなところ(スパイスの効いたユーモア)なのかもしれない。
 さて、そういった意味ではこの「アリス」の監督のティム・バートンって言う人は、そんなナイトメア・ムービーの第一人者と言っても過言ではないお方。「ビートルジュース」から出世作の「シザーハンズ」をはじめ、あの「バットマン」でさえ、この人の手にかかれば独特のキモカワイイ&ちょっとコワイ(=ナイトメアな)世界に彩られてしまうわけで、何を隠そうhiroc-fontana、そんなティム・バートンさんは前から大好きな監督だったのよね。それで、今回の「アリス・イン・ワンダーランド」も凄く期待して観たわけ。
 ところで、あなたは映画って、何を目的に観ます?
 それは人によってそれぞれよね。例えば辛いことがあってそれを忘れたいとき、奇想天外なアクション・ムービーを観てスカッとする人もいれば、シリアスな映画を観て涙を流すことで発散する人もいる。大好きな俳優・女優をウットリと観ることで現実逃避してもいいよね。
 俺の場合、この「アリス」に期待したのは文字通り映像の「ワンダーランド」であって、ストーリーの辻褄とか、メッセージとか、ジョニデのカッコよさ、ではなかったのね。だから、と〜っても楽しめたの。で、何が言いたいのかというと、実はこの映画を観る前にヤフーの映画サイトで「アリス」のユーザー・レビューを観たら、あんまり評判が良くなかったのね。曰く「ストーリーが単純だ」とか「映像は綺麗だけど主人公の感情が描かれてない」、果ては「Jデップが脇役みたいで残念」(笑)みたいな(ったく日本人ってのは屁理屈が先にくるからダメなのよね、って俺のことか 笑)。でね、映画館に行く前にそれを見ちゃったものだから、さてホントーに観に行くべきかどうか、少し迷ってしまったのだ。(我ながら小市民で、トホホ・・・。)
 でも、それに惑わされていたら、ニターッと笑いながら空中をヌーッと一回転する“チェシャ猫”にも、あの双子漫才師みたいなブキミでどこか憎めない“トゥイードルダム&トゥイードルディー”にも、ヒラヒラした手のメルヘンチックな動きがアヤシイ“白の女王”にも、会えなかったのだ。この素晴らしい映像美、ナイトメア・ムービーの傑作を見逃すなんて、なんと勿体ないことをしようとしていたことか。
 ホント、自分の感覚を信じてわが道を行くというのが大切よね!それが今回の教訓。
 あ、そうそう、初めての3D体験も楽しめましたよ。はっきり言って、付け足しですけどね(笑)。
「アリス イン ワンダーランド公式サイト