ミポリンズ・ファンキー・チューンは80年代の至宝〜「セミスウィートの魔法」

hiroc-fontana2010-08-15

 今でこそ、安室から始まってDoubleとかリリコとか、ダンス・ナンバーを“歌う”日本人歌手はゴロゴロいるけれど、ユーロビート華やかなりし80年代を振り返ってみると、結局日本人でその分野を担っていたのはアイドル分野のウィンクでありオギノメちゃんであり、そしてこのミポリンだったのかしら?なんて思うのだけど。どうかしらね?まあ賛否両論あるでしょうけど。
 ただ、ウィンクやオギノメちゃんがカバー曲でブレイクして、その後はその路線に沿った「擬似ユーロビートのダンス歌謡」をウリにしていたのに対して、中山美穂は、「WAKU WAKUさせて」という筒美京平大先生の正統派・歌謡ディスコ路線から入って、コムロ〜角松トシキの自作自演系ミュージシャンによるファンキー路線(「50/50」「Catch Me」)を経てCINDY(シンディ山本)という個性派シンガー・ソングライターと出会うことで「人魚姫」「Witches」そして「セミスウィートの魔法」という、アイドルの枠を遥かに超えたグルーヴィーでオリジナリティ溢れる良質なダンス・ナンバーを量産して、その音楽性では他を圧倒していたように思う。(ちなみにCindyは残念ながら故人とのこと。)
 結局、俺が思うにダンスナンバーのキモっていうのは、リフの魅力じゃないかな?と思うのね。インパクトがあって、かつ繰り返しに堪えられる魅力的なコード、リズム、メロディー、ね。短いフレーズに集約されたそれが、単調に繰り返されることで聴く者に強烈なグルーブ感と恍惚感をもたらす、みたいなね。ミポリンがファンキー路線に方向転換したきっかけとなった筒美作品「WAKU WAKUさせて」でいうと「♪ワクワク〜させてよ〜」の下降旋律の繰り返しがその典型だよね。
 その意味で、「♪I don't mind,i don't mind」のコーラスで始まる「人魚姫」(1988.7月)は、メロディというより強烈なビートと腹に響くバッキングの掛け合いの繰り返しで聴かせるような曲で、まさしくダンスナンバーとしての王道を行く完璧なファンキー・チューンだったもんだから、最初聴いたときはホント、衝撃だった。その分、中山美穂が歌う必然性が全くなし、みたいなギモンもあったけどね(笑)
 さて、「セミスウィートの魔法」は「人魚姫」から2年経った1990年3月の発売(作詞:松井五郎、作曲:Cindy、編曲:Rod Antoon)。作曲、編曲は「人魚姫」と一緒なんだけど、こちらはちょっと小難しい印象でインパクト的に弱いからか、最高位は3位ながら売上げは18万枚程度と、思ったより売れなかったのね。売上げは地味でも俺はこの曲、当時からホント大好きで「人魚姫」以上にハマッたのよね。この曲の魅力はなんと言ってもこのフレーズ。

Take Me with your love,
 Take me with your kiss
.)
 セミスウィートの魔法かけて 
Take Me with your heart,
 Make me feel your kiss
.)
 ふたりにできる夢をためしたい Oh baby・・・

 カッコの中は女声コーラスで、そのあとがミポリンのボーカル。この掛け合いフレーズが曲の中に何度も出てくる。コーラス部分のフレーズはメジャーキイのワンコードなんだけど、それが美穂さんが歌う部分になるとマイナーコードが絡んだ独特の哀愁味が感じられるメロディーに変わる。Cindyらのハキハキした女声コーラスと美穂さんの鼻にかかったマッタリ声との対比も加わって、明朗→哀愁→明朗・・・その繰り返しがとてもクセになる曲なのよね。Rod Antoon(当初は、マイケルの「スリラー」でお馴染みロッド・テンパートンと勘違いしてた・・・)によるブラコン風な打ち込み系重低音の効いたキラキラアレンジもGOODで。これは間違いなく、80年代のジャパニーズ・ダンス・チューンの至宝でしょう、て言いすぎ?
 ところで、上述したように、中山美穂はこのころから音楽的にはアイドルの枠を遥かに飛び越えて、90年代のドラマ系メガヒット時代を経て後期はかなりアーティスティックな方向へと向かうわけだけど、やっぱりそれ(必要以上に高い音楽性)が却って仇となって、彼女の歌手としての存在価値を薄めてしまう結果になったような気がするのね。
 それについては、ず〜と昔のエントリーで書いたのでよかったらこちらを。  ↓
 「美形アクトレスシンガーの哀しみ
 やっぱりね、たとえば美穂さんが歌手活動を再開したとして、どちらかというと俺は彼女のウタを聴きたいというよりも、彼女がどんな人と組んでどんな音楽を作るのか、そっちに興味がいっちゃうものね。。。