コンカツ騒動

「あの〜、hiroc-fontanaさんとお〜、こんどお〜、会ってお話ししたいんですけど・・・。」
 発端は、日曜の夜にかかってきたこんな電話。相手は、10年来の知り合いの女性。
(う、やばい・・・。)思わず、俺が身構えたのは、その彼女が4●歳にして、独身だから。以前はかなりアソビ人風でキャピキャピしてた彼女も、慢性疾患のせいで仕事も辞め、いまは“家事手伝い”で地味に暮らしてるんだそう。時々顔を合わせても、相変わらず軽口はたたきながらも、化粧ッ気のないその顔は、悪いけれど確実に“オバサン化”が進行していた。でも、結婚願望は人一倍強くて、何度か「合コンとかしませんか?」なんて冗談めいたハナシを持ちかけられたこともあった。そんな彼女から、電話が来ちゃったわけ。
 でも俺、自分でも驚いたことに、無意識のうちにこんなことを口にしてた。
「うん、いいよ。いつにする?」
 ダメだよね。社交辞令だけで世渡りしてる俺の、いつもの八方美人グセがこんなところでポロッと出ちゃった。本当なら「いや、実は俺は結婚する気はもうないので(だってゲイですからね)そう言われても困るんだけど。」って言わなきゃいけなかったのにね。
 彼女は「ああ、よかった!」って(苦笑)。で、結局、次の日曜日に会うことになったのね。それからは、彼女にどう断れば傷つけずに済むだろうか?とか考えて、ホントにユウウツな毎日で。
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 とても4●歳には見えない、気合の入りきった服装で待ち合わせ場所に現れた彼女。(わ〜、キツイな・・・。)
 近くのカフェに入って、すぐさま彼女が畳み掛けてくる。
〜〜以下、彼女の会話。
彼女「私、コンカツ中なんです。いままでも色々な人とお付き合いしたり、お見合いもしたんですけど、中々いい人がいなくて。もう先がないし、焦ってるけど、もう新しい人を探すとしても確率低いし、知っている人の方がやっぱりいいかな、と思って回りを見てみたら、hiroc-fontanaさんだったらいいかも?と思えて。それで思い切って電話したんです。そうしたら会ってくれるって言ってくれたから、嬉しかったの。」
え?。。。そんな軽いハナシだったの?)いきなりの肩透かし。(でもとりあえず、シナリオどおりにすすめるか。。。)
俺「○○さんが勇気を振り絞って電話をしてきてくれて、俺、正直嬉しかったです。でも、俺にも俺の事情があるので、それをお話するには電話より会ってお話するほうが良いと思ったんです。」
一瞬、彼女の顔がこわばる。
俺「実は俺、ゆる〜く長く交際している人がいて、でも、その人は既婚者なんです相手はオトコだけどね!それに、実はプライベートな事なので詳しくは話せないけど、俺にも結婚できない身体上の理由があってゲイだからね!、その人はそれも理解したうえで付き合ってくれてるんです。だから、それが今の自分の心の支えなんです。これ、嘘じゃないもん!)」
彼女「え〜?hirocさん、カラダに異常があったなんて知らなかった。前にS子ちゃんと付き合ってる、って聞いてたし。」
ヤバ・・・確かに、ずっと前に先輩から紹介されて、彼女の知り合いのS子ちゃんとイヤイヤ付き合わされたことがあったんだっけ!)
俺「えっと、あ、あの頃はね、まだ自分が結婚できると信じてたんですよ。つらいイイワケだわ・・・。)でも今はもう、あきらめました。支えになってくれる人もいるし、一度、独りで生きていくと腹を決めたら、もう寂しくないんです!よし、これで少しは挽回。)」
彼女「ワタシ、hirocさんが何でそんな風に言い切れちゃうのか、わかんないな〜。それに、カラダのどこかが悪いようにも見えないしな〜。」
見透かされてる・・・(汗)。)
俺「あ・・・あのね、見た目では俺、フツーに見えるのかもしれないけど、だからこそ、今まで悩んできたわけ。誰にもわかってもらえなくてさ。でもね、わかってくれる人が現れてくれたおかげで、もう今のままで最高にシアワセなんですよ。ヤバイ、支離滅裂だわ・・。)だからもう、無理に結婚とかもしたくない。きっと、○○さんが思ってくれているより、変わり者なんですよ、俺。」もう、めちゃくちゃ・・・。)
 ビックリしたのは、そのあとの彼女のセリフ。
彼女「わかりました。ワタシね、自分からアプローチしないと気が済まないタイプでね、でも、言っちゃえばそれだけでスッキリするの。ワタシもね、実はそんなに無理して結婚はしたくないんです。独りのほうがラクだし。でもね、時々回りを見るとすごく焦ったりして、どんどんチャンスが少なくなっていくのが堪らなくなるときがあって。あんまり高嶺の花の人じゃ最初から無理だしえ??)、それで、hirocさんに電話しちゃったのよね。でもね、今日はこれで何だかスッキリしちゃった。」
彼女の方が何枚も上手だったのね。。。おみそれしました。)
 その後は、何だか彼女のお悩み相談室みたいに、延々とコンカツの難しさを聴かされ・・・。
 「また、相談に乗ってもらうかも。」って。

 結局、彼女のコンカツに振り回されただけなのね!