『英国王のスピーチ』

hiroc-fontana2011-03-08

 アカデミー賞作品賞受賞!ということで、一応ハナシのタネに(笑)観てきました、『英国王のスピーチ/The King's Speech』。
 正直、イギリス映画特有の地味っぽさが漂ってるし、最初はあんまり期待していなかったのだけど、いざ観始めたら、“あ、わかる〜、あ、わかる〜”みたいなカンジで(笑)。かなり入り込んじゃったhiroc-fontanaでした。
 英国王リチャード6世。彼は子供の頃から吃音(どもり)を持っていた・・・という事実がこの映画の背景。これは実話なのね。この映画は、彼が吃音症と立ち向かいながら偉大な王として成長していくまでのストーリーなのだけど、ここにジェニファー・ラッシュ(「シャイン」からウン十年、トシとったね・・・)演じる実在の言語療法士、ローグが絡んでくるわけなのね。型破りな言語療法士と、言語障害(と同時に内面に深い傷)を抱える英国王の葛藤と魂の交流を中心に語られるストーリー、よくよく考えればサリバン先生とヘレン・ケラー(「奇跡の人」)の焼き直しなのよね。
 でもね、このリチャード6世という人物像、コリン・ファースの名演もさることながら、とっても人間的に共感できたのよね。 吃音というコンプレックスを抱えて生きてきたがゆえに人前に出るのを極端に恐がったり、内向的でありながら一方でプライドが高くてひどい癇癪持ちだったり。少年時代に親から受けた厳しい「躾」(≒虐待)や周囲から吃音をからかわれたトラウマを抱えていたり(・・・実はそれが吃音の心的要因なのだ)。そして、生来の真面目さゆえに最後は自分が望んでもいなかった立場(王位を継承する)に担ぎ出されてしまって、その重圧に耐えかねて思わず弱音を吐いて涙を流してしまったり・・・。
 何だか、全部が全部、人ごとじゃなくて(苦笑)。実は俺、観ながら涙が出てきちゃって。。。きっと映画館の観客の中で一番、泣いてたかもね(冷汗)。
 (注 以下ネタバレ)
 でも映画の方はね、即位後初のスピーチが何とか成功したところ(クライマックス)でスパッと終わってしまうので、入り込んでいた俺としてはあまりにあっけない終わり方に、思わずズッコケちゃったりして(笑)。考えてみれば、その後の王としての栄光の日々を追って描いたとしても、映画としては冗長になってしまうだけかもしれず、あの終わり方は観客にその後のリチャード6世の人生に思いを馳せる余裕を持たせて正解だったのよねきっと。
 さて、もうひとつこの映画のオススメは「絵」がとても綺麗なこと。
 数少ない屋外シーンのいかにもイギリスらしい朝靄の公園の風景は、ダークトーン中心でまるで水墨画のような美しさ。また、室内のシーンでは、意識的に人物が画面の中央から外れた構図に配置してあって、何気ない壁紙が素敵な背景になって俳優たちのポートレートのように見えたりするのだ。ちょうど写楽の役者絵みたいな感じね。それと、イギリス紳士たちのスマートな出で立ちも見所で(コリン・ファースが予想以上にステキ!)、特にフケ専の方々にはたまらないと思う(あ、これは余談かしらね(笑))。
 映画を総合芸術として捉えたい方には、そんな意味でも十分楽しめる映画かと。