“聖子＆まりや”の予定調和

　11月23日発売の松田聖子さんのニュー・シングル「特別な恋人/声だけ聞かせて」。晴れてラジオ解禁となって、hiroc-fontana、もちろん試聴しました。そう、今回はこのブログ初めての、リリース前レビューをしちゃいます。ネタバレ注意！（笑）
　まずは「特別な恋人」から。曲調はこれぞ竹内まりやという感じの、メジャー・キイのミディアム・ポップス。イントロのエレキ・シタールの音色とそれにからむ英語のコーラスがあら！何とも新鮮ですわ。そこに聖子さんのシルキー・ボイスが加わって･･･と言いたいところだけど、今回の聖子さん、声は少し不調かしら。かなり枯れている印象。とは言え、久しぶりに自作でない詞（コトバ）とメロディーをもらって、それを咀嚼しながら味わい楽しんでいるシンガー・聖子さんが確かにそこには居て、どこを切っても“まりや節”ながらも、それに聖子の歌唱が加わることでまた一つ別な世界がちゃんと出来上がってくるというのが凄い気がするのね。このコラボは予想通り正解だったかもね。サビでは得意のしゃくり上げも出て（まりやさんのリクエストかな？）、結構聖子さんもノリノリな印象で。そこも好感が持てるところ。
　ただ、歌詞の方も悪い意味で予想通りというか、不安が的中（笑）。まりやさん、「若い頃には出会えなかったオトナの恋：あなたは特別な恋人」というコンセプトから一歩も踏み出してません。ちょっと広がりが足りない感じ。そこはちょっと残念かも。口の悪いファンからの“聖子のセルフ詞と変わんないじゃん！”みたいなバッシングが目に浮かぶようで。でもね、フォローしておきますけど、言葉選びとメロディー、そして何より聖子のボーカルの気合いが違うぶん、セルフ作品とは違う何かがこの作品にはあるような気がするのよね。たぶん、聴くほどに味が出てくるのは確かだと思う。
　ところで俺ね、実はまりやさんが聖子さんに曲提供したと聞いた時に“どんな曲になるかな〜”と想像を膨らませながら、まりやさんのベストアルバム『Expressions』を聴き直したことがあったのね。その時に“あ、これだ！”とピンときた曲があって（こんな曲だったらイイな、とね）、その曲が「みんなひとり」（アルバム『denim』収録）だったのね。そうしてフタを開けてみたら、この「特別な恋人」の曲調が「みんなひとり」に凄く似ていたから、俺、ビックリしながらも、何だか安心したのだ。あまりにも、まりや節全開で。たぶん数年後、まりやさんは必ず自身のアルバムで「特別な恋人」をセルフカバーするだろうね、英語詞に訳したりしてね（笑）。
　「特別な恋人」はまだ一般試聴できませんので、未聴の方のためにここはサンプルとして「みんなひとり」を（笑）。ボーカルは松たか子さんです。「特別な恋人」はこんな感じよ、たぶん。

　さて、カップリングの「声だけ聞かせて」も聴きました。こちらはビックリの、どマイナーのボサノバ。間奏では何とセリフまで入っちゃう。コンセプトとしては明菜に提供した「駅」ふたたび、というところかしら。別れた恋人への慕情、という世界観も似ているかも。こちらは早くも賛否両論渦巻いているようで。
　確かに近年の聖子さんは自作のマイナー曲を結構歌っていて、それがどうしても演歌調に聴こえてしまうものだから、この手の曲は聖子さんには合わないという気もするのだけど、俺はこの「声だけ聞かせて」に関しては結構イケるかも、と思ったのよね、何となく。「駅」とか「告白」とか「返信」とか、まりやさんにはベタベタしたバッド・ラブ・ストーリーの世界観を持った“火曜（歌謡）サスペンス系”マイナー作品の系列が確かに存在するのだけど、それはまりやさんの爽やかなボーカルだからこそ成り立つ世界であって、例えばそれを坂本冬美が歌ったら恐らくクサーイ演歌になってしまうだけで、とてもじゃないけれど同世代のOLたちの心には響かないような気がするのね。「声だけ聞かせて」に関しても同様に、ネチっこさを纏いながらもいまだ軽さを残した奇跡の聖子ボーカルによって、ギリギリ（笑）演歌にならずにその世界観が保たれているような気がしたのだ（て、かなり無理やりなフォローに聞こえちゃうかしら･･･苦笑）。
　「声だけ聞かせて」もまだ一般試聴できませんので、未聴の方のためにここはサンプルとして「シングル・アゲイン」を（笑）。ボーカルは中森明菜さんです。「声だけ聞かせて」はこんな感じよ、たぶん。

　
　というわけで勝手なことばかり書いてしまったけれど（発売されて聞き込んだら全然印象が変わって冷や汗モノかも　笑）、やっぱりこのコラボ、俺としてはどこか予定調和な印象で、期待以上のものではなかったというのが正直なところかもしれない。けれども、３０周年を経て聖子さんなりに新しいことに挑戦している姿を見せてくれていることはファンとしてとても嬉しいし、これは思い入れが過ぎるかもしれないけれど、今回の２曲は少し地味ながら純粋にイイ曲だとも思うので、聖子さんには大事に歌っていって欲しいナと。そしてこれからも少しずつでもこういったコラボに挑戦して欲しいナと。
　さて、果たしてどのくらいヒットするかしら。。。