味わい深い新曲の陰にAKB商法のがっかり

特別な恋人(通常盤)

特別な恋人(通常盤)

 11月23日発売のセイコさんの新曲「特別な恋人/声だけ聞かせて」。オンエア解禁で聴いたときは期待以上でも以下でもない、想定範囲の出来かな?なんて思っていたのだけど、やっぱり聴けば聴くほどに味が出てくる作品だったのは確かなようで、いざCDで聴いてDVDでPVを観て、なんてしているうちに、“とってもイイ!”に変わってきたのよね。
 特にレコーディング風景のオフショットという設定のPVがとても良い感じでね。ブラウンの皮ジャケットを着てロングヘアーに少しウェーブをかけた(このスタイル、まりやさんの影響かもしれないけど)すっぴんに近い聖子さんがいつになくナチュラルな大人っぽさを醸し出していて、そんな聖子さんがマイクを前に歌うだけのPVなのだけど、その表情や仕草から、久しぶりに“シンガーに専念”してこの歌を歌うことを楽しんでいることや、何より竹内まりやさんが創ったこの曲の世界をとても愛していることが伝わってくる感じがするのよね。

 今もまだ情熱のかけら 私の中に残ってる

あたりのフレーズの情感の込め方なんか、全盛期の聖子さんが戻ってきたようで、久しぶりにゾクゾクした。これはセルフ作品では決して味わえなかった感動だと思う、やっぱり。詞はもう一つ“掘り下げ”が足りないのは確かだけど、まりや流“美”メロがそれを十分カバーしている。いつもながらどこかノスタルジックで胸に沁みる、とても惹きの強いメロディー。
 
 ところでね。今回は書きたいことがもう一つあって。
 このCDには「初回封入特典」が付いているのだけど、それが「A賞:ラジオの公開録音ご招待」「B賞:その公開録音で(聖子さんの前で)新曲が歌える」という内容で、俺としては正直、“ふ〜ん、そうなの。”的な印象だったのだけどね。
 ただ、ビックリしたのがその応募要領。何がビックリって、CDに1枚しか付いていない「応募券」を「2枚」(!)集めて応募してください、って。
 つまり、少なくともCDを2枚買わないと権利は発生しないわけ。お・ま・け・に、締切は発売日からたった5日の“11月28日”って、これ、ファンをバカにしてるのかしら?って感じで。
 熱狂的なファンの方はそれでもナマ聖子ちゃんに会いたい一心で初回限定盤・通常盤の2枚を買って、せっせと応募するのかもしれないけどね。でもそうだとしても、これって純粋なファン心理を利用した悪徳商法には違いないと思う。いくら初回盤と通常盤ではジャケット写真や「声だけ聞かせて」の間奏のセリフが違うとは言っても、大した違いではないわよね。そもそも同じものが2枚あって嬉しいのはせいぜいお札とかパンケーキくらいで(笑)、CDなんてものは本来、大枚はたいて2枚も買うものじゃないと思うのよね。
 今回は、せっかく良い曲にめぐりあってそれを楽しんで歌っている聖子さんだけに、俺としてはユニバーサル・ミュージックのアクドイ商売に利用されているようで、何だか悔しい気がしたのだ。思えばこれって、総選挙の投票券をCDに封入して売りまくったAKBと同じやり方なのよね。こうした行為自体、レコード会社として「音楽の内容は二の次、ただCDが売れればいいのだ」と宣言しているようなもので、そういったことが自ら音楽産業の衰退を招いていくということを自覚しなさいよ、ユニバーサルミュージックさん。(・・・て、少し熱くなりすぎたかしら・・・。)
 とにかく、聖子さんのようなベテラン歌手にはこんな手を使わずに、内容さえ良ければ例えば由紀さおりさんのアルバムのように話題性だけでもじわじわと売れるはずなのに、今回は所属レコード会社の身勝手で下品な販売戦略という、変なところでミソがついてしまったようで、ちょっとがっかりさせられてしまった。聖子さんに罪はないのにね。