ひらはらさんはいつも。〜平原綾香『ドキッ!』

 「クラシックかぶれの高慢ちきオンナ」とか「テクに溺れて押しつけがましい」とか散々に言っておきながら(笑)、新作が出るたび、ついついCDを買ってしまう数少ないアーティスト。それが、ひらはらさん(微笑)。結局、好きなのよね〜俺。
 久しぶりにオリジナル作品中心に構成したこのアルバム、思わず「綾香たん、ど〜ゆ〜つもり?」と言い放ちたくなるようなジャケットも、聖子たん顔負けのタイトル『ドキッ!』も、これまでのひらはらさんの“ドヤ顔”キャラを払拭するような印象で、実際に聴くまでは「まさか、今更、アイドル路線に転向かしら?」なんて思っていたのだけど。。
 これが実に良い意味で期待を裏切ってくれて、まさにひらはらワールド全開の、充実の内容でございました。この人については、3年前の過去ログ(『Path of Independence』の回)でほとんど言い尽くしている感じではあるのですけど、今回の感想も、まるでそれをなぞったような印象で。自分でも3年前の日記を読んで驚いたくらい。あ、いまの俺の気持ち、そのまんま!って(笑)。今回も、上質な洋楽ポップスとして聴けるリード・シングル「NOT A LOVE SONG」をはじめ、テク追究の成果お披露目、今回はコレよ!的な(笑)全編ヴォーカリーズで繰り出すジャズ・スタンダード「Night in Tunisia」、オジサンキラー面目躍如な「いつも いつも」(なんとあの、小田和正を引っ張り出しちゃうとは!)、とはいえ彼女が本格的ヴォーカリストであることを誰にも納得させる美しいスキャット曲「ヴォカリーズ」と、非常にヴァラエティに富んだ内容で、お腹いっぱい。
 時にえずく(苦笑)ようにさえ聴こえる独特のクセのある歌い方は好き嫌いがあるだろうけど、その奥に潜む“うた”に対する真摯な姿勢、そして驚異的な集中力。それを知れば知るほどにその魅力の虜になってしまうのね。確かな音程と発音にはさらに磨きがかかって、特に深みのある低音から美しいファルセットの高音に伸びていくつながりの自然さ(音域の広さ)は、日本の音楽界はおろか、世界を見渡しても恐らくトップクラスではあるまいか。決してオーバーではなく、そう思っている俺なのだ。
 はじめはクラシックを題材にしながら、その音楽世界はいつの間にクロスオーバーを重ねて、ジャズ、ポップスさえも凌駕して、いつの間にか何もかも飲み込んでは怪しく輝いていた一昔前の「歌謡曲」、その世界にいま一番近づいているのが、ひょっとしたらひらはらさん、だったりして・・・。そんなことないわよね(笑)

ドキッ!

ドキッ!