アカデミー賞関連作2作

 最近、映画づいてます。今年、この4月までに観た映画だけで昨年1年間に観た本数を既に超えています。何故でしょう。友達もそうらしいのですけど、映画ってクセになる。一つ観ると、芋づる式に“あ、あれも観たい”というのがどんどん出てくるのですね。
 そうか、映画館で観る「予告編」効果か。。。。。。映画会社の思うツボね。
 
 さて、最近観たのはこれ。

 「アーティスト」。ベタですけどね。でもね、やっぱり観て良かった。古い映画が好きな人間にとっては、たまらない映画。ストーリーははっきり言ってチープなんだけど、俳優の美しさも含めてモノクロの映像がとにかくゴージャスで、あとは饒舌な音楽だけで展開する1時間40分。サイレントだからセリフは最小限の字幕が出るだけで、そこがまた観客の想像力を膨らませるのね。モノクロ&サイレント。表現に制約があることで、却ってイマジネーションが湧いて豊かな芸術体験が味わえるようにも思える。この至福。これを体験できるか否かは、「映画」という“虚構”をいかに積極的に受け入れて楽しめるか、観客の姿勢によって大きく変わってくるような気もする。
 それにしても主演のジャン・デュジャルダンクラーク・ゲーブルを彷彿とさせるまさに往年のハリウッドの2枚目役者という面持ちで、こんな人よく見つけて来たわね、という感じ。ある意味彼のルックスの「リアリティ」(=古めかしさ)が、観客を自然にタイムスリップさせる鍵で、この映画の成功要因の一つに違いない。
 
 もう一本、こちらもアカデミー賞を獲りました。「ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」。
 
 もうね、アフリカ系アメリカ人の“家事奴隷”(メイド)が主人公というだけで、人種差別をテーマにした「おしん」的な涙と苦労の物語を想像してしまったのだけど、これが、意外に見終わると爽やかな気持ちになる作品で、特に「笑い」が随所に盛り込まれていて「お涙ちょうだい」だけで終わらないのが良かった。
 映画は様々な人種の女優陣の群像劇となっていて、特に主人公のエイビリーンを演じるヴィオラ・デイヴィスの思慮深い抑えた演技と、その友人のメイド、ミニーを演じるオクタヴィア・スペンサー(アカデミー助演女優賞を獲得)のコミカルで親しみやすいキャラクターの対比が見事で、白人マダムたちのキャラクターも含め、1960年代のアメリカに生きた女性たちがとても生き生きと描かれているように思えた。ところで、奴隷であるメイドさんの家庭も含めて、60年代のアメリカ人の生活ぶりがあまりに豊かなのにビックリで。ある意味これぞ、古き良き時代のハナシなのね。
 個人的にはね、俺が子供の頃、床屋を営んでいた我が家に福島から住み込みで働きに来ていたお姉ちゃんたちのことを思い出してしまって、彼女たちがどうしても映画の中の黒人のメイドさんたちに重なって見えてしまって、何だかとても切なかったのよね。ウチの親から年じゅう小言を言われたり叱られたりしていた彼女たちだけど、子供の俺にとっては大切な家族で、優しいお姉ちゃんたちだった。。。そんな感じでこの映画の中の白人の子供たちが黒人のメイドを母のように慕う気持ち、何だかとても沁みたのよね。
 いい映画でしたわ。