BSフジ『Beautiful Song』

 1時間オール太田裕美、という夢のような番組がBSフジで放送されました。5月13日放送「ビューティフル・ソング」。ファンとしても、いまどき何故太田裕美?な気もしつつ、おそらくディレクターが裕美ファンなのかしらみたいに自分を納得させて(笑)視聴したところ、これがまた裕美さんのヒット曲がフルコーラスで十二分に楽しめたと同時に、それらヒット曲にまつわるマニアックなエピソードが満載の、素晴らしい番組でした。まさにこれは彼女に対する愛情がなければ作れない内容。あながち私の推測、外れてなかったかも(笑)。
 それに何より太田裕美さんのボーカルが絶好調で、素晴らしいパフォーマンスばかりで、赤いチャンチャンコ間近な裕美さんを思えば(笑)まさに保存版と言えるかも。
 さて、見られなかったファンの方のために番組で披露されたエピソード・トークをかい摘んで紹介しましょう。

 当初はアルバムの1曲目としてレコーディングして、4コーラスもあってとにかく「長い!」と(笑)。でもスタッフの間で「良い曲だ!」と盛り上がってシングルとしての発売が決まり、2度レコーディングしたので印象深い曲だった、と(そっちかい!と思わずツッコミ 笑)。
 遠距離恋愛がテーマで「酷い男だ」と思いながら歌っていた、とも。でも彼女は当時20才でそんな経験もなく、感情移入せずに歌ったのが却ってよかったのかしらね、と。ついで出たインタビュアーの平井(理央)アナの遠距離恋愛バナシに「早いうち、男性のそういう(イヤな)所を知っておいて良かったですね」と裕美さん。あっぱれです。

  • 雨だれ

デビューのエピソード。もともとタイガースのジュリーファンで、友達とオーディションに応募したら自分だけ受かってしまったという…。スターになるべくしてなった裕美さんなのでした。当時はジュリーと同じ歌番組に出ているだけで夢のようだったとか。

 裕美さんがレコーディングしていたソニー・スタジオでたまたまディレクターが同じだった大滝詠一氏が『A Long Vacation』を別の部屋で録音していると聞き、挨拶に行ったところ「自分よりお前(裕美さん)にピッタリの曲があるんだ」と言われて聞かされたのがこの曲。松本さんの詞は確かに太田さんのために書いた詞のように思えて、(レコーディングに時間がかかる)大滝さんのアルバムはいつ出来上がるかわからないから「先に出しちゃえ!」(笑)ということでシングルとして裕美さんが発表した、という話。

  • 九月の雨

 太田さん曰く4枚目のアルバム(正しくは6枚目)『こけてぃっしゅ』の収録曲として出来上がってきて、シティ・サウンドのオシャレな曲が並ぶアルバムの中でこの曲だけが“歌謡曲”チックで最初は違和感があったが、逆にそれが印象深くて結局はシングル・カットされることになったのですよね、と。

  • 君と歩いた青春

 伊勢正三がゲストで登場。アルバム『12ページの詩集』制作にあたり、ショーヤンに曲依頼したところ、自身(風)のアルバム制作が忙しく一旦は断られたが、のちにレコーディングが終わった発売前の新譜のテープを渡されて「この中で好きな曲を歌っていいいよ」と太っ腹な回答が。そしてカバーさせてもらったのが「君と歩いた青春」だったという話。ショーヤンから「ずいぶんシブイ曲を選んだね」と言われたらしい(笑)。

 「心が疲れたりしたとき、甘いものをふと口に含むと、心も身体も元気になったりするじゃないですか?」。大震災があって、自分が出来ることは何か、1年以上それを考え続けて「やはり歌うことだな」と戻ったときに、色んな人の心に寄り添って“ひとりじゃないよ”ということ(愛)を伝えたい、という思いでこの曲を歌っています、という裕美さん。
 
 番組のまとめで裕美さんはこんなことを言ってました。「たかが音楽、されど音楽。音を楽しむこと=人生を楽しむという気持ちで歌っていけたらいいな。」
 いや〜、ここ数年で進化したボーカルもさることながら、持ち前の明るさと勘の良さで、トークも絶好調な太田裕美さん。この時期にこんな素晴らしい番組が制作された奇跡に感謝です。
 録画したDVD、家宝にします。