20年後の、モーニング

 今朝、少しばかり用事があって朝ごはんを食べずに外出したのだけど、外出先でちょっと時間が空いてしまったから、遅い朝食を摂るために久しぶりにファミレスに入ったのね。
 もちろん、「おひとりさま」。
 そしてファミレスの隅っこの方に通されたのだけど、案内された席の両側を見たら、お爺ちゃんがふたり、それぞれ二人がけの席に一人づつ、ポツネンと座って、新聞を読みながらモーニングを食べていたのね。
 なんだかイヤだな〜とは思ったのだけど、気の小さい俺には「席、変えてください」なんてとても言えないから(笑)、仕方なくそのまま座ったの。
 そうしたらすぐ、今度はひとりのお婆ちゃんが入ってきて、またすぐ近くの席に案内されたのだ。
 あら。何だか俺の周りだけ老人ホーム状態になっちゃった。。。
 こうなるともう本気で「イヤだな〜」と思いながらも俺、気を取り直してとりあえずウェイトレスを呼んで、ドリングバーがセットになったモーニングを頼んだのね。
 そうしたら突然「さ、ドリンクバー行きましょ。」と大きな声がしたので思わず“ビクッ”(笑)。
 それはお婆ちゃんの独り言だったの。
 「よっこらしょ」の掛け声ととともに立ち上がったお婆ちゃん、俺の両隣にいたお爺ちゃんたちに、「足は治ったの?」とか「今日は雨が降るらしいよ」とか大声で話しながらドリンクバーへ向かう。孤独な老婆の独り言にも聞こえるその声掛けに、お爺ちゃんたち、無視するのかと思いきや。
 「ああ、今日は杖持ってきたよ」とか「傘なんて持って来てないよ」と軽口で答えてる。どうやら、爺ちゃんたちも婆ちゃんも、このファミレスの朝の常連客のようなのだ。
 そして、その後はそれぞれの席で大声をあげながら、どこかビミョーに的を外れた言葉のキャッチボールを続けるジジババたち。そんな中で、肩をすぼめてひとり、黙々とトーストをかじる俺が居たのだ。
 「あ、どうも何か足んないと思ったら、ケチャップが足んない!。」
 突然そう言って席を立つお婆ちゃん。彼女のテーブルには食べかけの“スペシャル・モーニング”が。あ、俺の食べたモーニングより豪華だ!(苦笑)
 
 都会の片隅では、こうして孤独な老人たちの密やかなモーニング・パーティーが毎朝、繰り広げられているらしい。
 でもね。
 何だか自分の20年後を見ているようだった。
 考えたくもないけど(笑)。